2013年12月18日水曜日

「ららほーと進出と商店街の再生は両立できるか」 渡辺利明


 「ららほーと進出と商店街の再生は両立できるか」 渡辺利明
 十二月五日付本紙に東椎路の商業施設問題について私見を述べましたが、本稿では、もう少し掘り下げて皆様と考えてみたいと思います。
 日本は人口減少・少子高齢化時代を迎え、国勢の将来が危惧される時代に突入しています。沼津は東海道の、風光明美な恵まれた立地にありながら近隣市町に比べて人口の減少、経済活動の衰退ピッチが急速です。
 さまざまな分野の人達と会話を交わせば、沼津の将来に対する危機感が満ち満ちています。しかし残念ながら、この声が一つの声に結集していきません。かつて石油コンビナート問題などで大きなパワーを発揮し全国の注目を集めた人遠も、高齢化のためか、今は声もない状況です。
 東椎路への、ららぽーと進出問題は、このような沼津の将来を決定付ける重要な課題だと思っています。沼津市は「中心市街地活性化基本計画」なるものを推進してきましたが、現在まで実績は上がらず、現実は、全く逆の方向に進行しつつあります。
 大型店は次々と去り、特に丸井の閉店で街には若者が激減し、最後の砦、西武も撤退してしまいました。西武は数年前にも撤退の報道があり心配していましたが、市当局は、これへの対策を何ら手掛けることなく、撤退の日を迎えてしまいました。
 現在の社会・経済環境では、大型小売店で中心街を再生させることは無理であることが証明されています。全く別の視点で人々を集める仕掛けが必要だと思います。この仕掛け作りが成功し人々が集うようになれば、自ずと中小の小売り、飲食などの店も周辺に集まるようになります。
 仕掛けの一番手っ取り早いのは、市役所などの官公署、病院、文化施設、体育施設などを駅周辺にシフトすることだと考えます。「コンパクトシティ」を目指す先進都市は、これらの施策を巧みに取り入れて街づくりを進めています。
 中心街へ、いかにして人々を回遊させるか、各市町の知恵比べとなっています。国は十年以上前から「まちづくり三法」などで、この方向への街づくりを誘導しようと、さまざまな予算措置を講じています。
 そんな中で、ららぽーと出店問題が出てきました。この話に疑問を抱き、二〇一一年に十年計画でスタートした「第四次沼津市総合計画」なるものを見直してみましたが、進出が予定される地に、このような施設を誘致することは、うたわれていません。ごく直近に突然浮上した計画のようです。そもそも市の「総合計画」なるものは、相当慎重な検討の結果、策定されたものと考えていたのですが、それほどのものではないようです。
 ところで、ららぼーとと商店街再生は両立するのでしょうか。沼津に何十回となく訪れている日本総合研究所の藻谷浩介氏は、人口減少時代と経済活動の関係を分析して
います。
 それによれば、大型店舗をいくら増やしても全体的な消費が増加するわけではないことを数字で実証しています。それが証拠には、全国の百貨店、スーパーの売り上げは減少傾向が続いており、国民の食品、衣料などの消費金額が増えることはありません。
 新店が進出すれば、その周辺の商業施設の売り上げが減少し、やがては閉店に追い込まれるだけです。以前から噂のある大型スーパーや原地区の商業施殴は消えていくか、大幅縮小に追い込まれるでしょう。これが小売業の実態です。
 かつて小さなマグロ丼店を経営し閉店した経験のある栗原裕康市長には、このあたりのことはよく分かっているでしょう。敗れたものは去るしかないのが資本主義社会です。
 それでは、ららぽーとと商店街は共生できるのでしょうか。私は人々の需要の絶対額が伸びるわけではないので、まさに「無いものねだり」だと思います。そんな手品のようなことは期待できません。
 沼津市の幹部は、この両立は可能だとしていますが、まず疲弊した商店街を再生させてから、その種の発言はしていただきたいと思います。イーラdeの失敗(藻谷氏は計画段階から無謀な投資だと指摘していた)に始まって、市の行政には、このところチグバグさが際立っています。
 一方、市内には幾つかの商店街組織があり、藻谷氏から「街づくり」について何回も学んできているのに、この問題について一向に声を上げない点を不思議に思っています。まさに自分達の生活権がかかっているのですから。あるいは、現在の店はたたんで、ららぽーとに出店させてもらえればよいと考えているのでしょうか。
 今回の問題については沼津の将来に禍根を残さないよう、時代の大きな流れや周囲の環境変化を見回し慎重に検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。(下石田)
《沼朝平成25年12月18日(水)寄稿文》

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