沼津鉄道高架実施へ
知事、事業推進「決断」
JR沼津駅付近鉄道高架事業の方向性について、川勝平太知事は20日、「今日をもって基本的に判断材料は全て出て、決断した。しかるべき方向ヘアクションを起こしていく」と述べ、事業を推進する方針を表明した。地権者らが反対している沼津市原地区への貨物駅移転に絡み、従来は否定的だった強制収用での用地取得には言及しなかった。沼津市で開かれた総合コンベンション施設「プラサヴェルデ」のグランドオープン記念式典終了後、記者団の取材に答えた。関連記事27面へ
強制収用言及せず
知事は「相手のあること」として決断の中身の具体的な言及は避けた。ただ、推進派は高架化の進展を望み、反対地権者らは貨物駅の代替として原地区での健康文化タウン構想の実現を求めていることを挙げ、「そうしたことが全てかなうようにする」と強調。「この1、2カ月でキーパーソンに会う。秋に入ったころには全部の方々に説明し終える」とも述べ、反対地権者に加え、JR貨物や市などとの合意形成を図っていく意向を示した。
また、これまで否定的だった強制収用による貨物駅移転予定地の用地取得に関しては、記者からの質問に対して「決断をしたということが、今の申し上げる全て」と述べるにとどめた。
事業をめぐり、県が昨秋まで実施した住民参加の合意形成作業パブリック・インボルブメント(PI)で、高架を実施する2案と実施しない2案をまとめた。だが、知事は事業の方向性を明確に打ち出していなかった。
知事は反対地権者らと個別に会談を重ね、貨物駅移転と健康文化タウン構想に資する施設整備をセットで提案したが、地権者らはこれを拒否。プラサヴェルデ全面開業までにするとしていた合意形成に至っていない。
具体的な事業進め方示さず
(解説) JR沼津駅付近鉄道高架事業の方向性について、川勝平入知事は「決断した」と強い口調で述べ、貨物駅移転用地の強制収用についても否定しなかった。しかし、反対地権者との合意形成の手法など具体的な事業の進め方は示されず、本格的な工事着手への見通しは立っていない。
知事はかねてから、高架化に伴う原地区への貨物駅移転や、同地区のJR東海道線をまたぐ歩道橋設置などの私案を、移転用地の反対地権者に示し、決断を促してきた。しかし、地権者は土地を売らない姿勢を今も崩していない。
2003年の事業着手から10年以上、構想からでは30年近く経過する。地権者に判断を促していても、結論は先延ばしされるだけだ。知事は「腹の中で決まっている」としている方向性を、一刻も早く自分の言葉で分かりやすく説明すべきだ。
(東部総局・豊竹喬)
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反対派「さらなる対話を」
沼津高架推進へ
推進派は評価、様子見
JR沼津駅付近鉄道高架事業をめぐり、川勝平太知事は20日、事業推進の方向へかじを切った。従来にはない「決断した」との強いトーンで、秋までに関係者の合意形成を図る考えを示した。ただ、貨物駅移転予定地の反対地権者らは依然として受け入れ拒否の姿勢を崩さず、溝は深い。知事自身が「連立方程式」と表現した難題をいかに解くか。推進、反対派双方が次の出方を注視する。
沼津市の栗原裕康市長は知事発言を「今までの考えの延長線上と捉えている」と冷静に受け止めた。沼津駅の高架化を実現する市民の会会長の市川厚沼津商工会議所会頭も「知事に判断を任せる以上見守るしかない。年度末には明確に結論を示してくれるだろう」と様子見の構え。推進派の男性は「知事が反対派と会談を重ねて努力し、地域の実情を把握した中での決断。一歩前進」と評価した上で「今後は事業が推進していることを発信してほしい」と訴えた。
一方、反対派の男性はこれまでの経緯から「知事は反対地権者に決断を迫っている」と懸念し、「高架するにしてもしないにしても自分の言葉でしっかりと説明するべき」とさらなる対話を求めた。
知事はこの日、これまで否定的だった強制収用による貨物駅移転予定地の用地取得に関し、言及を避ける場面もあった。原貨物駅に土地を売らない地権者の会の殿岡修会長代行は「強制収用となったら敵として対応する。現時点では真意が分からないが、信頼関係が怪しくなってきた」とくぎを刺した。
静新平成26年(2014年)7月21日(月曜日)
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