原に最新式貨物ターミナル
沼津鉄道高架 知事所信表明
県議会9月定例会
県議会9月定例会は25日開会し、川勝平太知事は県政の諸課題に対する所信表明で、JR沼津駅付近鉄道高架事業に伴い、県が沼津市やJR貨物と協議し、沼津市原地区に最新式の新貨物ターミナルを整備する方針を示した。現在の貨物駅機能の原地区への移転に知事が正式に言及したのは初めて。
関西地方の貨物ターミナルの視察やJR貨物首脳との会談を通じて、「最新式の効率的かつ静かに荷役作業のできるターミナルが整備されれば、首都直下型地震など国の有事に際して沼津が重要な役割を果たすことができることを確信した」と述べた。
新貨物ターミナルについて、コンテナを本線上で列車からホームに積み降ろしができる着発線荷役(E&S)方式を取り入れる案を示した。その上で「平時においては待避機能を主とする」と指摘し、騒音対策などを含め地元住民に配慮する考えを明らかにした。
一方で「有事の際に貨物取扱機能が発揮できるよう、平時でもわずかとは言え、貨物取扱を非常時に備えて行っていなければならない」と述べた。
同地区に鉄道で分断された南北の連絡通路となる立体横断施設を先行して整備する方針もあらためて示した。
(静新平成26年9月25日夕刊)
沼津鉄道高架 現行計画で事業進展へ
県と沼津市 用地取得は不透明
川勝平太知事が25日、県議会9月定例会でJR沼津駅付近鉄道高架事業に伴い、沼津市原地区に貨物ターミナルを整備する方針を表明したことを受け、県と沼津市は現行計画に沿って事業を進展させる考えでいる。ただ、事業に反対する地元地権者から同意が得られるかは不透明なままだ。
川勝知事は所信表明で、原地区に最新式の貨物ターミナルができた場合、首都直下型地震などの有事に「重要な役割を果たす」と指摘。一方で」平時には(列車の)待避機能を主とする」と、反対地権者側が譲歩した待避線に近いことを強調した。
線路をまたぐ立体横断施設の設置に向けた調査費200万円も9月補正予算案に計上。東海道線で分断されている地区内の南北通行確保へ検討を始める。
だが、肝心の用地取得が進まなければ、事業の進展は望めない。県によると、計画の貨物ターミナルの用地11・8㌶のうち、買収が必要なのは9・3㌶。これに対し、市がこれまでに買収を済ませたのは6・9㌶と74%にとどまっている。
県幹部の一人は「まずは知事の考えに理解がいただけるよう、住民に説明を尽くすしかない」と話す。
「大きな前進」「心強い」
地元市長、県議ら歓迎
川勝知事が県議会9月定例会でJR沼津駅付近鉄道高架事業に伴い、沼津市原地区に現在の貨物駅の機能を移転し、貨物ターミナルを整備する方針を示したことについて、市長や市選出県議ら事業推進に期待を寄せる地元関係者からは「大きな前進」「心強い」と歓迎する声が相次いだ。
沼津市の栗原裕康市長は「鉄道高架は相当な犠牲を払ってもやるべき。推進するには貨物駅の移転が不可欠で、知事の発言は市にとって大きな前進になる」と強調する。沼津商工会議所の市川厚会頭も「事業の一日も早い着工に向けて心強い。知事の行動と決断に敬意を表する」とし、同市などと連携して事業推進に最大隈の努力をすることを約束した。
市選出で県議会議長の多家一彦氏(自民改革会議)は「長年の懸案が一気に片付く方向性が見えた。鉄道高架のスタートの年になれば」と期待を寄せる。自民改革会議代表の杉山盛雄氏は「知事が腹を固めたと感じた」と述べた上で「知事と原地区の関係者とのイメージの違いの折り合いをどう付けるか」と課題を挙げた。
ふじのくに県議団の曳田卓氏は「知事が自ら関西の貨物ターミナルを視察し、認識を改めたのはいいこと」としながらも「地権者の理解が得られるかは非常に不透明だ」とも加えた。
公明党県議団の蓮池章平氏は「対話と合意形成をスピード感を持って進め、これまでの努力が無駄にならないよう結果に結び付けてほしい」と要望した。
地権者は反発 「事実上の貨物駅」
川勝知事が、沼津市原地区に待避機能を主とする最新式の新貨物ターミナルを整備する方針を示したことを受けて、原地区への貨物駅移転に反対する地権者などからは「ターミナルは待避線ではなく、事実上の貨物駅だ」と反発する声が上がった。
地権者の1人で、原貨物駅に土地を売らない地権者の会の殿岡修代表代行は「私たちの思いを無視した内容」と憤る。殿岡代表代行らは5月に知事と会談した際、旅客列車と貨物列車の時間調整に使う貨物列車用の待避線を認める譲歩案を提示している。「提示したのは一切、荷役作業がない待避線。わずかでも荷役がある以上は貨物駅」と強調する。
地権者の会の加藤益久事務局長は「荷役作業があれば、騒音や生活環境への悪影響など懸念は無くならない。知事を信頼してきた地元の気持ちを考えてほしい」と訴える。
高架事業見直しを望む市民団体・さわやか沼津2012の松下宗柏代表は「貨物駅移転と高架事業は一体の話。人口が減少する中、市の財政を考えれば高架事業どころではない」と指摘し、今後も事業見直しを求めていく考えを示した。
(静新平成26年9月26日朝刊)
沼朝平成26年9月27日記事
高架事業新たな局面に
知事が「原に新ターミナル」発言
解脱川勝平太知事が二十五日、「新ターミナル」という表現で原地区に新貨物基地を設ける考えを示したことで、沼津駅付近鉄道高架事業は、新たな局面を迎えることになった。
知事の発言は、県議会定例会初日冒頭、県政の課題について所信を表明する中で行われた。
知事は、まずプラサヴェルデのグランドオープンに言及。沼津駅駅北地区について「にぎわいは予想したとおりであり地域再生のきっかけになるものと確信している」との認識を示した上で、「沼津市が、県東部の拠点として、さらに発展していくためには、現在の貨物駅跡地の有効活用をはじめとする、沼津駅周辺のまちづくりを着実に進めていく必要がある」と規定。ここで「現在の貨物駅跡地」という表現を使い、現貨物駅の移転に踏み込んだ。
続けて、関西の貨物駅ターミナルを視察したこと、JR貨物の社長、会長と面談したことに言及。
「これらを通じて、阪神淡路大震災の際、その前年に整備された姫路貨物ターミナルが、救援物資の輸送拠点として大きな役割を果たしたことを知った」とし、「これに照らせば、沼津の地に最新式の、効率的かつ静かに荷役作業のできるターミナルが整備されれば、現在想定されている首都圏での直下型地震などの災害が発生した場合、まさに国の有事に際しては沼津が重要な役割を果たすことができると確信した」と述べた。
従前、「貨物駅の必要性」に疑義を唱えていた立場からは大きな方向転換だ。ただ、新貨物駅については知事なりの考えがあるようで、次のように述べた。
「ここで強調したいのは、沼津の新ターミナルは、平時においては待避機能を主とするもので、しかし、有事の際に貨物取り扱い機能を発揮できるよう、平時においても、僅かとは言え、貨物の取り扱いを、非常時に備えて行っていなければならない。その際、地元の方々が懸念されている騒音等、生活環境への影響に関しては、万全の対策を尽くしていく」
舵は新貨物駅設置に切りつつ、内容については、これまで言われている計画とは趣を異にするものを示唆した。
現在の貨物駅の取扱量が一四万トンだと言われているのに対して、現行計画によると、新貨物駅は最大四〇万トンと考えられている。
知事は、自らが示す新ターミナルについて、基本的には、あくまでも待避線であり、貨物の取り扱いについては「僅かとは言え」と表現。計画されるような、現行を大幅に上回るような機能は必ずしも必要ではないとの考えをにじませた。
この裏にあるものは何か。現状で新貨物駅用地の取得率は予定の七四・四%。三割近くが不足する中で、計画された規模の施設整備が困難であるとともに、知事は自分の任期中は強制収用しないことを重ねて明言している。一方で、地元からは「待避線」なら受け入れる余地はある、との妥協を引き出している。
この両者を足して出る答えは何か。新ターミナルは、与えられた用地で規模を縮小して設けるということか。
知事の表明は次のように続く。
「当地は千本松原をはじめとする自然と、白隠禅師ゆかりの寺院など歴史を感じられる緑豊かなところであることから、地元の皆様と検討を進めてきたグリーンヴィレッジを柱にした桃源郷づくりを沼津市と協力して進めていく」
「このような中で、原地区においては、まずは鉄道により分断されている南北地域間の連絡の利便性と防災機能を向上させるため、平時には富士山が見える展望台にもなる歩行者用の立体横断施設を先行して整備することとし、その検討経費を補正予算に盛り込んだ」
知事の思惑は、どこにあるのか。新貨物駅の規模が縮小されるようなことになるとすると、JR貨物の理解を得られるのか。また、貨物を取り扱うとなると、待避機能だけならという地元の反発を受けることは必至。
具体的な話が進むにはまだ課題は多いようだ。
(沼朝平成26年9月27日号)