都市計画「拡散」から「集約」へ
県の区域マスタープラン策定方針
県土の再構築提示
※都市計画区域マスタープラン 長期的視点で都市の将来像を示す指針的な役割を持つ。2000年の都市計画法改正で都市計画区域ごとの策定が都道府県に義務付けられた。静岡県には静岡や浜松、東遠広域、東駿河湾広域、岳南広域など20区域のプランがあり、おおむね5年ごとに見直す。実現に向けて政策的にまちづくりを誘導するには総合計画や福祉、産業、防災面の各種庁内計画との整合性も不可欠となる。
くらしや産業の中核を成す都市の将来像を示す「県都市計画区域マスタープラン」の次期改定作業に向け、県は、目指す都市構造を従来の「拡散型」から「集約型」へ転換させることを柱とした策定方針を固め
た。密度の高い高度な都市機能を周辺地域の開発や地域振興へと波及させる従来の戦略を抜本的に転換。分散した都雨機能を交通ネットワークでつなぎ、集約化することで、均衡ある県土の発展を目指す。
人口減少や雇用環境の変化、東日本大震災を受けた地震・津波対策など、近年の急激な社会環境の変化が背景にある。再構築する県土の姿を全市町や県民に提示し、実現に向けた政策展開や住民参加のまちづくりを促す。県は、この方針に基づいて県内全20区域のプランの見直しを本格的に進め、2015年度末までに完了させる。
都市の拡散への対応ではこれまで「コンパクトシティー」の概念があった。ただ、県都市計画課は「中心部へ向けて都市の範囲を凝縮する志向となり、相対的に人口密度が下がる周辺や郊外のフォローがされてこなかった」と指摘する。
集約型都市構造では都市範囲(市街化区域や用途地域)の無理な縮小はしない。中心部周辺や郊外エリアはむしろ、地域特性を生かすことに重点を置く。これらを交通ネットワークで結び、人々がどこに住んでも都市機能の恩恵が受けられるよう戦略的開発を図る。
具体的には、中心部は公共施設や商業施設を集めてにぎわいづくりに努める。周辺市街地では空き地などの活用でゆとりある居住空間を創出する。郊外は農林業を中心とした地場産業の育成を重視するとともに、従来からの集落の拠点性を高める。
津波リスクがある沿岸部や新東名高速道沿線の開発は内陸のフロンティアを拓(ひら)く取り組みと連動した土地利用を目指す。
同課は「県土構造の特性を生かして都市や農村、漁村が育んできた個性や魅力を強化しながら、必要のない都市の広がりを抑えるのが目的」としている。
転換の背景に危機感
県が都市計画の方向性を転換する背景に、「社会環境の変化に対応していかなければ将来にわたって魅力ある県土を残せない」(都市計画課)との強い危機感がある。
戦後、県内でも人口の増加や自動車の普及に伴って郊外に住宅団地や大型商業施設が整備され、市街地が拡大し続けた。中心部は空洞化し、虫食い的に市街地化する農村の魅力低下が顕著になった。
県内人口は減少に転じ、試算では、30年後に最大68万人減る。都市中心部では空き店舗や空き家が増加する一方、郊外では車が運転できない高齢者が増え、税収減で都市の維持が困難になるといった問題が懸念される。
ただ、地価の安さなどから郊外への開発要求は依然として強いのが実情。同課担当者は「集約型都市構造の必要性はまだまだ理解されていない」と認めた上で、周知活動が重要になると話す。
実現には市町との連携も欠かせない。集約型まちづくりで先行する富士市や中心部のソフト施策が効果を上げている藤枝市などの事例も発信し、「各市町の取り組みを支援したい」(同課)という。
《靜新平成25年11月29日(金)夕刊》
2013年11月29日金曜日
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