PI委終了4案提出へ
沼津駅高架 県、絞りきれず
県のJR沼津駅付近鉄道高架事業をめぐり住民の合意形成を図るパブリックインボルブメント(PI)の監視、助言に当たってきたPI委員会(委員長・石田東生筑波大教授)は4日、沼津市で最終会合を開き、県が提示した事業計画の代替案4案を承認した。鉄道高架の推進派、反対派の溝は大きく、県は案を一つに絞りきれなかった。石田委員長は15日、最終報告書として4案を川勝平太知事に提出する。
代替案は鉄道高架2案と、沼津駅橋上駅化の2案。高架は市中心部の現貨物駅を原地区に移す案と、近くの駅に統合する案に分かれる。橋上駅案は、駅の南北を結ぶ立体道路と自由通路を設ける案と、自由通路だけを造る案になった。
県の担当者は各案には用地取得、鉄道事業者の意向、都市計画の大幅変更などの課題や不確実要素があるとし、「これ以上の絞り込みは不可能」と述べ、委員も理解を示した。
PI委は、鉄道高架の推進派、反対派の住民が参加したPI勉強会で取りまとめた地域づくりの進め方として、「何も決まらない状態は最も避けるべき」「財政へ配慮し、効率的な事業とすべき」ーなど4項目の提言も、知事に提出することを確認した。
県は2011年11月にPIを開始し、18回のPI勉強会を開いた。車座談議や会場型情報交換会も行い、延べ約2800人の住民から意見を聞き取った。
事業方向付け早急に
(解説)
県が2年かけて実施した沼津駅付近鉄道高架事業のパブリックインボルブメント(PI)は、結論を一つに絞れないまま終了した。「鉄道の高架化」を進めるのか、「駅の橋上化」に変更するのか。今後は意思決定者の川勝平太知事の判断に委ねられる。
地元ではPIに対し当初から結論の先延ばしとの批判が強かった。推進派、反対派の訴えが最後まで平行線をたどることは予想されていた。当事者の沼津市やJR貨物が参加しなかったことにも疑問の声が上がった。
県は県議会で、知事が年内に方向付けする方針を示していた。しかし、PI終盤の10月、知事は「現場を知る職員に任せる」として、方向付けする時期の明言を避けた。
知事は高架化推進を掲げる一方で、原地区の新貨物駅用地の強制収用は行わないと訴えてきた。知事の考えを含め、PIで残った代替案はいずれも、沼津市、JR貨物など関係者との協議が不可欠になる。推進派も反対派も停滞する市街地の活性化に向けて早期の方針決定を望んでいる。県がどの案で進めるか方針を固めない限り、交渉は始まらない。
(東部総局・豊竹喬)
∽沼津駅付近鉄道高架事業事
業主体は県で、2006年に国の事業認可を得た。施行期間は22年度末まで。現計画は、JR東海道線、御殿場線を延べ約5㌔高架化し、13カ所の踏切を除去、幹線道路8路線を立体化する。事業費は787億円で、このうち県と市がそれぞれ約190億円を負担する。高架化には、駅近くの貨物駅の移転が不可欠だが、移転予定地の原地区で地権者の反対があり、用地取得率が7割で止まっている。
《靜新平成25年11月5日(火)朝刊一面》
沼津駅高架Pl終了
異なる受け止め
JR沼津駅付近鉄道高架事業をめぐる住民間の意見対立を解消しようと、県が取り組んできた住民参加型合意形成作業パブリックインボルブメント(PI)が終了した4日、推進派と反対派のPIの結果に対する受け止め方は大きく異なった。
高架推進の立場でPIに参加してきた「東駿河湾まちづくり研究会」の工藤政則さん(54)は、PI委員会が四つの代替案を川勝知事に提出することに対して、「推進派、反対派が納得できる結論を出すことがPIの目的だったはず。両極端の案が残った結果は、決して成功と思えない」と苦言を呈した。
こうした声にPI委の石田東生委員長(筑波大教授)は「多様な意見を持つ住民同士が議論を重ね、地域づくりに共通認識を持てた」と強調し、今後は県、沼津市、JR貨物の協議に生かすよう求めた。
一方、事業の見直しを訴えてきた「郷土を愛する会」の松下宗柏さん(65)は「『高架ありき』でなく、駅の橋上化など、今まで公の場で取り上げられなかった意見を平等に扱ってくれた」と県の姿勢を評価した。その上で、県が事業の方向性をいつ示すのか、スケジュールを明確にするよう注文を付けた。
県交通基盤部の長島郁夫部長は「できるだけ早急に方向付けしたい」と述べるにとどめた。
《靜新平成25年11月5日(火)朝刊26面》
2013年11月5日火曜日
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