2012年6月14日木曜日

まちがどのくらいの商業養えるか

市街地活性化、まずデーターから  まちがどのくらいの商業養えるか  商店街活性化のために研究を続ける市中心市街地活性化協議会と市商店街連盟は、初のセミナー「中心市街地におけるエリアマネジメントの重要性!」を八日、大手町の沼津信用金庫ホールで開催。株式会社「大分まちなか倶楽部」のタウンマネージャーを務める牧昭市氏の話を聴いた。牧氏は大分市で、商店主らと個人的なつながりを作りながら集めたデータを活用して中心市街地活性化のための計画を作り、現在、実行に移している。  最初の市場調査が大事  大分の事例からアドバイス  講演に先立ち、仲見世商店街振興組合の原田治行さんが、昨年、大分に視察に行く予定だったが東日本大震災のために延期となり、牧氏に打診したところ、沼津のまちを見た上で話をしたい、ということから今回の講演となった、と説朋した後、講演に移った。  牧氏は「成功しているまちが大分というわけではない。現状で見て成功しているまちというのはないのではないか、ということを、まちづくりの関係者が集まる会合では互いに話し合っている。まちは生き物であり、良くなった所を五年後に見ると、とんでもないことになっていたということはよくある。まちづくりに関して基本的に成功ということはないと思う」として話を進めた。  経済活動では常に問題が発生し、その都度、適切に対処しなければならず、決まった対応のようなものはない。  牧氏は大分商工会議所の職員だったが、中心市街地活性化にかかわり、一年半程にわたってデータを集めた後、活性化策を実行に移した。それまでは沼津のように、いくつかの中心市街地活性化事業に取り組んでいれば「まちはよくなる」と思っていたという。  ところが、データを集めることによって中心市街地の問題点が浮き彫りにされた。それらのデータは牧氏が個人的に店主と関係を作る中で集めたもの。決められた書式による調査票などはなかったが、売上金額など重要事項は、ちゃんと含まれている。  「オーバーストア(店舗の供給過剰)というのは、どのぐらいオーバーストアなのか。沼津市の中心市街地活性化基本計画を見せてもらったが、十九年度までのデータしかなく、分析できなかった」とし、大分のケースに話を戻した。  大分市では行政計画によって駅の南側にまちを広げることになっているが、平成二十七年度には新JR大分駅ビルが開業して広大な商業床が新たに生じる。  同市中心市街地では二十一年度、二十三年度と大型商業施設が撤退したため、商店街の一平方㍍あたりの床効率(床面積に占める売り上げの割合)は上昇し、牧氏によれば「今、大分のまちというのは商業者にとって健全な状況になっている」。  しかし、二十七年度に駅ビルが開業すると床効率は十九年度のレベルまで下がることが予測されるが、ここで大型商業施設が撤退する前の十九年度の床効率の数字が適正であったかが問題となる。適正であれば、当時の状況と同じレベルでの現状打開策を考えなければならず、適正でないなら、適正にする方策をまず検討しなければならない。大分まちなか倶楽部が適正と試算した床効率は、現在よりも、やや高い数字だった。  大分市では八階建ての商業施設「サティ」が二十一年度に撤退。撤退後のビルを購入した民間企業に牧氏らが働き掛けて八階建てを二階建てに減築。  その上で、一階を総合食料品売り場とし、二階には二十四時間稼動の民間保育施設や学習塾などを入れ、物販施設を一切入れない計画とした。  減築にかかった費用一億円以上は、毎年の固定資産税が一千万円程減ることで相殺することが可能で、この商業施設は二十二年度に開業し、現在まで健全な経営が続いているという。  牧氏は「まちがどのぐらいの商業を養えるのかを試算しないと空き店舗対策は無効となる。家賃が、これまでバブリー(高騰気味)だったことにも見直しが必要。そして商店街に、どのような店舗が必要か、として空き店舗対策を考えないといけない。商業床が早い段階で余剰になるということが分かれば、復興計画を立てないと、賃料の低下は固定資産税の支払いに響く」などとした。  なぜ、大分にエリアマネジメント委員会が必要になったのかについては「まちの経営の観点で必要なので立ち上げた」としながら、話は、まちの経営に。  「余剰商業床が出るというのは、どこのまちでも同じ。これは決定事項と捉えてもらいたい。住居床に変えるなどの転換が必要で、大分の場合は駐車場も新駅ビルに二千台分を建設する計画があり、街中にある四千七百台分の駐車場は経営できないということになる」と説明。  空き店舗の一部は半地下式にして上を緑地帯とし、緑地帯については行政に手を打ってもらう計画を進めていること、地権者が協力的でなく貸してもらえない空き店舗がある場合には、二年間、空き店舗を有効活用しなければ固定資産税を上げるといった措置を行政と一体となって採る方針だ という。  「まちを形成するということはスキーム(計画)を形成するということ」だとしながら、複数の商店街が集まって形成している中心市街地に対して、商店主達は自身の商店街の視線でしか捉えないが、市民は、幾つかの商店街があるというのではなく、一体として認識するものであることを指摘。  このため、商店街の事務を一つにまとめることや、車をどこの駐車場に駐車しても均一のサービスを受けられるようにして市民の利便性を高める方策を実行に移しているという。  また、商店街のイベントは七夕とクリスマスだけにし、それ以外の時には学生団体や市民団体、NPO団体が自由にイベントを開催できるようにした。かかる費用が僅かなら、その分は支援するという。信用金庫の協力も得て、業務が休みとなる土・日曜日は信用金庫の駐車場をイベント利用者に無料開放してもらうことも決めた。  牧氏は大分のケースについて「もう商業だけでは、まちの再生は不可能だが、住居を持ってくる再開発だと十年や十五年と時間がかかる。大分は三年後に新JR大分駅ビル開業という激震が走るのでリノベーション(改善)で行う」とし、リノベーションスキームを作成中である、という。  牧氏は沼津について、「空いている床が多すぎるというのであれば、どの程度の床面積を埋めるのかというのを明確にしない限りは次の手は打てない。補助金をどんどんつぎ込んで空き店舗に出店しても需要がない限り意味がない」とするとともに、「データなく、(すべき)対策なく、空き店舗対策を行っても長くは続かず、失敗のパターンを繰り返す。店舗利用状況に合わせた店舗を入れていないから、結局は倒産する。最初のリサーチが一番大事。今の沼津市で何店舗を入れられるか明確にする必要がある」ことを繰り返し強調した。  質疑応答に移ると、ある商店街組合の代表者が発言。空き店舗に出店する際、受けられる市の補助金について組合の了解が必要なため、出店希望の際、あるいは出店した後に補助金を受けようという人達がやって来るが、中には事業計画をきちんと説明できない人もいるという。  これに対し牧氏は、大分の場合は市役所と相談した結果、補助金の窓口を市役所に置かず、牧氏らがかかわるまちづくりの組織に置き、申請者をその段階でチェックしていることを話した。 《沼朝平成24年6月14日(木)号》

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