2010年2月15日月曜日

キツネ化粧で嫁入り行列


 キツネ化粧で嫁入り行列
 沼津・上土朝日稲荷神社
 100人、半世紀ぶり奇習

 沼津市内の狩野川のほとりに立つ上土朝日稲荷神社(通称・お稲荷さん)にちなんだ奇習「キツネの嫁入り」が14日、半世紀ぶりに沼津市中心部で行われた。新郎新婦役のカップルを先頭に、キツネ化粧をした約100人の一行がにぎやかな行列を繰り広げた。
 新郎新婦役を務めたのは、近く結婚を予定している藤枝市の岡村友樹さん(27)と静岡市葵区の山田朋子さん(28)。岡村さんが待つ同神社に、山田さんが渡し舟で到着すると、集まった人から「おめでとう」と拍手が送られた。2人は手を取り合って神社に向かい、三三九度を交わすなどの神前結婚式を行った。
 その後、人力車に乗り込み神社を出発。かみし一もや法被姿の地域住民らが後に続いた。
 沿道からの声に手を振って応えた岡村さんは「活気があり、温かな沼津の雰囲気を感じることができた」と満足げ。山田さんも「商店街の人の心遣いがうれしかった。お互いの気持ちを確認する機会にもなりました」と笑顔を見せた。
 計画した沼津あげつち商店街振興組合の内田祥一理事長は「笑顔いっぱいの最高の嫁入りになった。工夫を重ねて、沼津に定着するイベントにしたい」と力を込めた。
(静新平成22年2月15日(月)朝刊)

2010年2月14日日曜日

キツネの嫁入り半世紀ぶり復活



 キツネの嫁入り半世紀ぶり復活
 きょう、130人大行列
 (沼津の商店誘客行事)
 バレンタインデーの14日、沼津市中心部に"キツネ"の一行が現れる。行列の先頭には新郎新婦ー。かつて市内の商店主らが誘客のために行っていた「キツネの嫁入り」行列イベントが、半世紀ぶりに復活する。
 計画しているのは「あげつち商店街振興組合」(内田祥一理事長)。市中心部にある同商店街の一角、狩野川沿いの「お稲荷さん」こと、上土朝日稲荷神社にちなむ。
 「ヤシロメガネ」3代目の八代厚さん(84)によると、同商店街では1955年前後、「キツネの嫁入り」行列を中元時期などに行っていた。
 男性店主らがキツネの面を着け(かみしも姿でスクーターに乗り、御殿場や富士、遠くは松崎まで集客に繰り出した。白無垢(むく)姿の花嫁も男性が女装したという。

 「先代から話を聞き、復活させたかった」と内田さん。今回、全国商店街振興組合連合会の補助金事業に選ばれ、念願がかなった。結婚を予定する静岡市内のカップルも見つけ、文字通りの「嫁入り」行列が実現する。
 以前は仮面だったが、今回は参列者全員の顔にキツネの化粧をする。同商店街の店主や「おかみさん会」のほか、地元の子供会、一般参加者ら130人規模の大行列になる見込みという。
 14日当日は、花嫁を乗せた渡し舟が正午ごろ、新郎が待つ狩野川に架かる「あゆみ橋」に着く。新郎新婦が上土朝日稲荷神社で挙式した後、午後1時に行列が始まる。
 市中心部の大手町、仲見世、上本通り、アーケードの各商店街を通り、午後2時半ごろ、あげつち商店街に戻る予定。
 あげつち商店街に並ぶ沼津東急ホテルも美容室を提供するなど、一丸で盛り上げる。内田さんは「ゆくゆくは沼津の夏祭り、よさこいに並ぶ行事にしたい」と期待する。
(静新平成22年2月14日(日)朝刊)

2010年2月11日木曜日

JR貨物社長 富士への統合否定的


 JR貨物社長 富士への統合否定的


 JR沼津駅周辺の鉄道高架事業をめぐり、JR貨物の小林正明社長は10日、都内の本社で行った定例会見で、川勝平太知事が展開している沼津貨物駅の不要論に対し、「(鉄道高架)事業は県事業。知事が変わり、考え方が変わったのかもしれないが、それは厳然として残っている」と反論し、「明治22年の立地以来、120年にわたり地元に貢献してきた。今後も使命を大いに果たさなければならない」と代替駅の必要性を強調した。
 富士地区の貨物駅に移転統合する可能性については「可能であればこの問題がなくても統廃合している」と否定的な見解を示した。同席した惟村正弘執行役員営業部長は「吉原は(製紙工場向けの)特殊な駅。富士は県が用地を拡張してくれれば別だが、沼津駅で取り扱い可能な長い貨物が扱えない」と指摘した。
 また、小林社長は川勝知事に面会を申し込んだことを明らかにした上、知事に対し、こうしたことを「真摯(しんし)に説明し、理解してもらわなければならない」と述べた。ただ、地元への説明については「地域のお役に立っていると確信している。不要論に説明義務が生じるという(知事の)指摘は納得しがたい」とした。
 惟村部長は沼津貨物駅で扱っている貨物について、「確かに取扱量は少ない」と認めた上、「トラックや船で運ぶことが難しい化学薬品や長尺物のほか、青果物など生活に密着した貨物も安価に運んでいる。沼津貨物駅の機能をセールスポイントに企業誘致も進んでいる」と説明した。
(静新平成22年2月11日(木)朝刊)

鉄道高架事業は、これからどうなるのか(下)長谷川徳之輔

 沼津駅周辺総合整備事業、鉄道高架事業は、これからどうなるのか(下)長谷川徳之輔

 これからどんな問題が出るか、どうして解決するか
 さて、このような事情にある沼津駅周辺総合整備事業はどう進むかである。
 第一に、六つの事業のうち、推進派の希望通り、原地区の貨物駅は中止されるだけで、残りの事業は、そのまま進むのであろうか。
 第二に、鉄道高架事業は中止されて、南北横断道路、屋上駅、屋上広場などの新規の事業に都市計画が円滑に変更されるだろうか。
 第三に、すでに沼津市が買収している鉄道高架事業予定地は、どう処理されるのか。
 第四に約三百億円の鉄道高架事業のための基金をどう経理処理するのか。
 第五に、貨物駅として都市計画事業の認可を受けている土地には、建築物の建築規制、土地利用の規制、土地の買い取り請求などの制限が付いており、いつまでも制限を続けるのか、また土地の買い取り請求に、どう対応するかである。
 第六に、ここまで事業を進めてしまった行政、議会の責任をどう間うのか、などなど。いろいろな問題を解決しなければならない。
 一番大切なことは、沼津駅周辺総合整備事業を考えた時点と今の時点では大きく経済社会環境が変わってしまったこと、これまでの考え方や仕組みが通用しなくなっていることを、市民も行政もしっかり認識しておくことであり、過去の失敗、不業績を今になってあげっらっても何にもならないことを認識すべきである。過去は過去として処理し、これからどうすべきなのかを考えなければならない。
 明確な決着が必要
 第一の問題は、それでは、都市計画は変更されず、なし崩し的に先延ばしされることである。
 事業は止まっても、計画をそのままにして、いつか復活するとして処理を先延ばしすることであり、行政の責任の先延ばしに過ぎず、従来は、このような対応がされることが通例であった。
 しかし、貨物駅の計画を止めては、残りの事業が進まないことは前述のとおりであり、先延ばしすることは問題の解決にはならない。表向き事業がストップして、鉄道高架事業は棚ざらしになるだけである。貨物駅の移転が消えるからには、全体の計画の見直しをしなければならない。
 第二に新しい計画を決めること、南北自由通路や屋上駅などに円滑に変更することができるかである。
 計画案、財源、費用負担などJRとの交渉、国、県、沼津市との調整を考えると、すぐに転換することは難しく、相当長期の時間を余儀なくされよう。まずは、小田原駅、清水駅などの事例を徹底的に調査して、情報資料を集めて、その功罪を市民に公開する。計画作成には、市民、商店街、専門家の参加を求めて、市民運動を高めることだろう。世論の力で市民意識を高めることしかなかろう。
 第三は、買収した用地を無駄にしないことである。
 富士見町地区、原地区には沼津市が買収した用地が散在している。土地の買収には利権が付きまとい、沼津市は、その実態を公表したがらない。しかし、どう利用するか考え、円滑に資産処理を進めるには、実態を隠すことなく、どのくらいの量があるのか、現在価値はどのくらいかなど、しっかりした情報資料を整備して、新しい利用方法を考えなくてはならない。
 原地区の貨物用地はまとまった土地であり、教育施設、医療施設や市民公園などに利用できよう。富士見町の土地は、鉄道高架事業用地を生み出すのではなく、良好な居住環境を整備するための区画整理事業を進めていくことであり、有効利用の道を探ることである。災い転じて福となし得るかどうかである。
 都市計画の事業制限、土地の買い取り請求 第四は、速やかに都市計画事業の認可を取り消すことである。
 都市計画法、土地収用法は、事業を推進するために、土地所有権の強制収用、土地利用の制限などを義務付け、逆に制限を受ける土地所有者の立場から、土地を時価で施行者が買い取ることを請求する権利が認められている。
 都市計画事業の認可の効果が続く限り、土地所有者の権利は不安定であり、また、事業を中止するにもかかわらず、施行者、沼津市は買収予算を計上し、要らない土地を買い続けなければならない。貨物駅の移転を中止するのであれば、早急に貨物駅移転の都市計画の事業認可を変更しなければならない。先延ばしして、放置しておく訳にはいかないのだ。
 使ってしまった基金の問題
 第五は、市民が営々として積み立てたはずの三百億円の鉄道高架事業を進める資金、基金がどうなっているか、しっかり経理できるかである。
 これまで鉄道高架事業の沼津市の負担は、三百億円の基金が積み立てられているから大丈夫だと説明されてきた。確かに現金であればそういう話も成り立つが、今果たして、この資金がどのくらいあるのか。
 積み立てた資金は現金であるわけでなく、土地の買収、他の事業への流用などで大半は使われてしまっている。基金の財務状況は必ずしも明確に示されている訳ではない。
 そもそも、鉄道高架事業のために積み立てたという基金が、もし鉄道高架事業をやらないとした時に、どう経理処理したらいいのか対応策は明確ではあるまい。貸付金だといわれる流用先の資金が返済される見込みもなかろう。使ってしまったものを取り戻すことはできないし、地価の変動で下がってしまった土地価格を取り戻すこともできはしない。
 真のリーダーの責任、出番だ
 第六は、究極の問題であるが、ここまできてしまったことの政治、行政の責任問題である。
 これまで二十年近く、無意味に、だらだらと進められてきたのは、中止することによって、それまでの事業に誰が責任を取るかが、はっきりすることを避けたい心理も、当事者には正直あったものと思われる。
 国、県、沼津市、それにJRが、それぞれの思惑でかかわってきたが、時代の転換により、これまで適切だと思ってきたことが変質してしまい、計画への疑問を持ちつつも、正直、転換を言いかねて、みんな、だんまりを決め込むか、責任を他に転嫁してきたのではなかろうか。
 折から中央政権も自民党から民主党に政権交代し、新政権はコンクリートから人へのスローガンで無駄な公共事業はやれない、やらないという方向を示している。新政権の中枢に位置する選良がこの沼津市から選出されている。
 今こそ、そのスローガンを実行するために、国土交通省、静岡県、沼津市、さらにJR当局を調整し、円滑に事態が解決されるように、舵取りする責任がある。川勝平太静岡県知事、栗原裕康沼津市長、いずれもこれまでの政策からは自由な立場にあり、県民、市民全体のために冷静、客観的に判断することができる立場にあると思う。まさに、これらのリーダーたちの出番だ。
 究極の責任は沼津市民にある
 究極の責任問題は、ここまで来たら、本来は鉄道高架事業の施行主体でもない沼津市、沼津市民が負わなければならなくなったことである。
 これまでの努力が無駄になったという思いもあるだろうが、さらなる負担を避けるために、方向転換は仕方がないと思うしかないと思わざるを得ない。
 この二十年の政治や行政の責任を問うたところで、市長や市議会は何回も替わっており、議会も市民も当時は鉄道高架事業を認めていたのだから、責任は市民全体にあると思うしかない。そう思うことが事態の解決を進めることになるのではなかろうか。今、問われるのは、沼津市民の冷静な判断、英知である。(おわり)(元大学教授、東京都)
(沼朝平成22年2月11日(木)号)

2010年2月10日水曜日

鉄道高架事業は、これからどうなるのか長谷川徳之輔

 沼津駅周辺総合整備事業、鉄道高架事業は、これからどうなるのか(上)
 長谷川徳之輔

 川勝知事の発言
 川勝平太静岡県知事が、長年の問題となっている沼津駅周辺総合整備事業、その中で土地収用をめぐって紛糾してきた原地区への貨物駅移転について、施行主体としての静岡県の立場から、貨物駅の移転、増設の必要性を否定する発言を繰り返している。
 推進を目指す栗原裕康沼津市長とも話し合ったが、貨物駅移転不要の知事の鉄道高架化事業への見解は、新たな問題を生んでいるようだ。
 では、どんな問題が起こるのか。先行きどうなるのか。いったん決めた公共事業をストップすることなど経験のなかったことであり、どう事態が進むのか、当事者にも、市民にも、戸惑いと混乱が起きている。
 究極は沼津市民の判断
 川勝知事の見解は、JR貨物の輸送量の全貨物輸送量の中で占めるウエートは極めて低く、さらに沼津駅での貨物取扱量も微々たるもので、今後も増加することはありえず、そもそも貨物駅の移転は無意味であり、現在の貨物駅の存在意義さえ問われるという見方である。学者らしく数字を挙げて説明しており、常識的には誰もが理解できる話である。
 知事は静岡県が施行主体で責任があるが、最終的には、事業を進めるかどうかを決めるのは沼津市民だと沼津市民に下駄を預けている。知事にして他人事としか見ていないようである。
 この知事の発言について、長い間、鉄道高架事業の反対運動を続けてきた市民にとっては当然であり、鉄道高架化事業は中止されるものと評価しており、推進派は落胆しながらも、鉄道高架事業自体が否定されたわけではなく、事業は進められると受け取っている。果たしてどうなるのか、不透明であり、そのために市民に戸惑いが広がっている。
 複雑な沼津駅周辺総合整備事業
 もう一度、この事業の仕組みをおさらいしてみよう。
 沼津駅周辺総合整備事業は六つの事業が一体となって機能するものであり、貨物駅の移転がなければ、そもそも鉄道高架事業は成立しないはずである。
 沼津市の旧市街地の衰退は市街地が東海道線と御殿場線で分断されているからであり沼津駅周辺の二つの鉄道線路を高架化して南北の交通を円滑化させれば南北問題は解決する、という考えから計画がスタートしている。
 鉄道の分断が沼津市の衰退の原因なのか疑問はあるが、事業は、まず、鉄道線路の高架化のために、現在の平面の沼津駅の西側にある貨物駅と東側にある車両基地を高架化線路の外に移転させる。
 その上で、跡地の車両基地用地と貨物駅用地その周辺を区画整理して鉄道高架事業の線路用地を生み出すとともに、市街地を整備し、高架下の土地の有効利用を進める。
 これに関連する、いくつかの道路整備などが加わる。さらに駅南の土地の有効利用のために駅南の再開発事業を行う。話題のイーラdeはその一環である。
 割の合わない沼津市、隠れたJR貨物
 六つの事業の事業システムは、別々の都市計画事業であり、施行主体も費用負担も異なる。鉄道高架事業と貨物駅移転事業は、静岡県が施行主体、現貨物駅の土地区画整理は沼津市が施行主体、駅北と車両基地の土地区画整理は民間都市開発推進機構が施行主体、駅南の都市再開発事業は沼津市が施行主体となっている。
 都市計画も制度的にはそれぞれ個別に決められており、沼津駅周辺総合整備事業は、これらを一体としての名称であり、鉄道高架事業がその中心に位置付けられている。鉄道高架事業がなければ、残りの五つの事業は形式的には別事業でも、実質的には存在しない事業なのだ。不思議なことに肝心のJR貨物は事業主体としての姿を現さない。
 貨物駅中止は全体の中止
 確かに貨物駅移転をやめても、都市計画としての鉄道高架事業は形式的には存続し得る。しかし、それには現在の貨物駅と車両基地の機能を維持するために、平面の線路をそのまま、存続しなければならないし、それでは鉄道を高架化しても意味のないことになってしまう。
 貨物駅を移転しないで現在の貨物駅を撤去する選択もあり得るが、JR貨物が受け入れないであろう。
 鉄道高架事業が消えれば、御殿場線の高架事業の用地を生み出すために行われる車両基地用地、富士見町地区の区画整理は必要なくなってしまう。もちろん、鉄道高架事業に関連する道路整備事業も意味がなくなる。現在三つ目ガードの北側で行われている道路拡幅、かさ上げの工事は全く役に立たない事業になってしまう。
 JR救済の国策事業
 そもそも、沼津駅周辺総合整備事業は旧国鉄、JRの救済なくしてはありえなかった事業である。
 当時、旧国鉄は巨額の債務超過、経営不振が極まり、国を挙げての救済を迫られていた。旧国鉄の三十七兆円に上る膨大な債務を棚上げして、その債務を処理する国鉄清算事業団を作り、二十五・五兆円の債務を承継させた。
 本体は、JR東海など六つの株式会社に分割して新生のJR株式会社にして再出発させた。JR貨物もその一環である。
 国鉄清算事業団は旧国鉄の資産を売却して債務に充て、不足する分を国が税金で面倒をみることになり、全国各地で旧国鉄の資産、土地が売却された。新橋、汐留駅貨物用地はその目玉だったが、虎の子の用地の処分も大した収入にはならず、債務は国の一般会計に引き継がれて大量の税金が投入されることになり、今でも年間一兆円近い税金が投入されている。
 JRの利益優先の事業、負担するだけの沼津市民
 鉄道高架事業は、もちろん鉄道と道路の平面交差が自動車交通の円滑な機能を阻害しており、とりわけ大都市においては都市計画の視点からも必要性は高かったが、その底流には当時の旧国鉄救済の要請から、鉄道高架事業の資金については極力、道路側、自治体が持つことが求められていた。
 運輸省と建設省の協定は、それを具体化したものであり、旧国鉄救済が重要な国策であったのである。
 高架化しても線路の利用効率が上がるわけでもなく、鉄道高架事業にJR側のメリットが少ない"地方都市では、その費用の九五%を、自治体、道路側が持つことで事業が進められてきた。
 沼津駅鉄道高架事業もその通りで、JRとしても当時、新規の投資先がなくなり、有能な技術者、土木建築の専門家が働く場所をなくしていた。彼らに働き場所を用意することもJR当局の経営上必要であったのであろう。鉄道高架事業は絶好の働き場所になる。
 その費用の大部分を道路、自治体が負担するのであり、JRは自らの負担なしで職員の雇用を続けることができる。さらに、貨物駅や車両基地のような資産の有効活用が自治体の負担で進められる。原地区の貨物駅が貨物取扱量を現状の一四万㌧から四〇万㌧へ拡大して資産の効率化が自治体の負担で進むなど経営上は絶好のチャンスだったと言わざるをえない。
 このような流れにある鉄道高架事業について、その費用は道路、自治体が負担する計画が、極力JRのメリットを拡大する方向で進められてきた。今になっては計画に乗ったことに内心忸怩(じくじ)たるものがあるJR当局は前面に出て、その必要性を説明したがらない。
 JRは、一私企業としての損得しか考えていないと言わざるを得ない。都市計画を決定し、運用方法を定めた国土交通省(旧建設省)、静岡県当局も明確な説明を避けざるを得ない。(元大学教授、東京都)
(沼朝平成22年2月10日(水)号)