2013年8月29日木曜日

「高架事業の本音を語ろう」 渡辺利明

「高架事業の本音を語ろう」 渡辺利明
 沼津高架PI勉強会もいよいよ終盤を迎えた。先般来、本紙に公共事業に関する専門家である長谷川徳之輔氏(元旧建設省高官、元大学教授)や佐野俊夫氏、山田孜氏の様々な角度からの指摘を拝見し、私は別の視点から、この問題を考えてみたい。
 現在、この問題は、県が主催するPI委員会でその方向性が議論されていて、私も特別な用事のない限り出席している。
 最大の問題点は一番の当事者である沼津市の出席がなく、PI委員、市民との対話を拒否していることだ。このことは、この事業に対する市当局の自信のなさの表れだろう。せっかく川勝平太知事の、円満な解決策を見出したいとの思いからスタートしたものが、中途半端なものに終わっている現実を市民の皆さんにも知っていただきたい。
 さらに、一部重要な論議が欠落しているように思われるので、以下、何点か指摘しておきたい。
 第一は、市当局にしか分からない財政見通しなどが議論されていない点だ。県の要請を受けて提出された市の財政見通しでは、人口、事業所が減り続けている中で、沼津市の税収は増加するという、全く考えられないデータが示されている。市当局は大幅増税を考えているのか。
 高架事業にかかわる市民の大きな疑問の一つに、市の財政は大丈夫かという点がある。老朽化した市民体育館の建て替え、清掃プラントの更新、緊急を要する津波対策、公共施設の維持管理など今後、途方もない予算が必要なことは誰の目にも明らかだ。
 限られた予算は、事業の優先度を見て厳しく見直さなくてはならない。たとえ計画決定されたものであっても、この作業は欠かせない。民間では、たとえ大企業であっても随時行われていることだ。このようなチェック機能が効かなければ、米国のデトロイト市、夕張市の轍を踏むことになる。
 第二は、投資効果の分析が、ほとんどなされていない点である。費用対便益比の数値がしっかり説明されていない。これだけ大きな事業だから、この点は、もっと様々な視点から議論すべきと考える。
 次に高架事業の実現可能性から考えてみたい。県の事務局が示している総合整備型A1・2案は、計画決定された当初案をベースにしたもので、無事着工できた場合、工期十五年としている。しかし、この案には無理がある。
 そもそもPIが始まったのは、高架化の前提となる貨物駅移転用地の取得に沼津市が失敗し、事業推進が行き詰まったことが出発点だ。栗原裕康市長は県に強制収用を申請し、川勝知事は、強制収用は行わないとして有識者会議、PIとなった。栗原市長は簡単に強制収用できるものと考えたようだが、川勝知事は慎重に四囲を見回し、他の方策を模索して現在に至っている。
 そもそも本件について、強制収用を考えるには大きな無理がある。土地収用主体者の問題もあるが、計画用地の三〇%が買収できず、地権者も多数に上る。誰が見ても無理な話である。あの国家プロジェクトとして進められた成田空港の用地買収にしても、最終的には、ほんの数人の土地所有者を相手とした強制収用が、流血の惨事を招く大抗争に発展した。
 本件のような人口二十万人の地方都市の計画に、しかも三〇%もの未買収用地に裁判所の許可が下りるはずがない。仮に裁判所の決定が下りたとしても、上訴が繰り返されるだろうから、結審に何年掛かるか検討がつかない。
 こう考えてくると、県の事務局が示した総合整備型A1・2案は全く着工見通しの立たない机上案であり、PI勉強会での検討には値しないものとなる。
 最後に、市当局のまちづくりの基本的スタンスの無さを指摘したい。高架事業は沼津駅周辺の交通問題を便利なものとして、この地域の活性化につなげようとしたものだろう。しかし、約二十年にわたって基本的な部分については全く進展することなく、この間、この周辺の斜陽化は急速に進んだ。西武百貨店も撤退し、今や見るべきものはない街になってしまった。
 隣の三島市、長泉町とは大きな格差がついてしまった。そして今回は、東椎路に大型商業施設進出の話が持ち上がり、市長をはじめ乗り気だと伝えられる。沼津駅周辺の活性化がうまく進展しないので、ここは切り捨て、東椎路計画に乗ろうということだろうか。
 仮にこの施設が出来れば、若干の雇用を生み、一定の売り上げを伸ばすことになろう。しかし、それは、ここに新しい需要が生まれるということではない。周辺の需要を食うだけの話だ。そして一番ダメージを受けるのは、沼津駅周辺商店街を中心とした近隣の商業施設だろう。
 そうなると、間違いなく雇用の場が失われる。この点は日本総研の藻谷浩介氏が指摘しているところだ。このようなことは、自身、新仲見世でマグロ丼店を経営した実績のある栗原市長は先刻理解していることと思う。また市長は、高架事業が現在のような状況では、全く実現性のない計画であることをよく理解しているのではなかろうか。
 最初の市長選公約で高架推進を唱え、関係する事業者らの支持を得て当選したことが大きな足かせになっているのではないか。現在の沼津の置かれた立場を冷静に考え、市民目線に立った市政運営に転換すべきではないかと考える。そして、商店街関係者は、今こそ結束してことにあたらなければ、自分達の明日がないことを自覚すべきだ。
 最後に、私達市民も高架事業のあり方を主題に、沼津のまちづくりの方向性について市民間での幅広い意見交換が欠かせないと思うのだが、いかがだろうか。(下石田)
《沼朝平成25年8月29日(木)号寄稿記事》

2013年8月28日水曜日

旧西武沼津店 本館解体あす着手

旧西武沼津店 本館解体あす着手
 跡地利用は検討続行
 1月に閉店したJR沼津駅前の旧西武沼津店(沼津市大手町)の本館について、所有者の伊豆箱根鉄道は27日、建物の解体工事を29日から来年3月末まで約7カ月間かけて実施すると発表した。解体後の活用方法は沼津市や沼津商工会議所などとも協議を進め、駅前の活性化につながるよう検討を続ける。
 解体工事は細かく粉砕して進める圧砕工法を採用し、9月中に建物に囲いや足場を作った後、本格的な解体に入る。建物が50年以上経過して老朽化しているため、現在の建物を維持しながらのテナント誘致などの再活用は困難と判断し、解体を決めていた。本館と新館を結ぶ連絡通路は4月に工事を始め、撤去を終えている。
 同社の担当者は「環境や地元に配慮して工事を進める。解体後の活用方法は未定だが、できるだけ早く方針を示したい」と話している。
 新館は県内外でアミューズメント施設などを展開する浜松市内の会社が2013年度内の開店を目指し、複合商業施設へのリニューアル計画を進めている。

 「幅広い世代が楽しめる施設に」
新館で沼津市長要請
 浜松市の企業が旧西武沼津店新館を複合商業施設にリニューアルする計画を進めていることについて、沼津市の栗原裕康市長は27日の定例会見で「幅広い世代が楽しめるような施設にしてほしい」と企業側に伝えたことを明らかにした。栗原市長は「沼津の顔となる場所が長い間寂しくなってしまうことを心配していた。計画通りに進めば一安心と思っている」と話した。
《静新平成25年8月28日(水)朝刊》

沼津北西部の市街化調整区域

沼津北西部の市街化調整区域
 市長 規制緩和に前向き
 沼津市の栗原裕康市長は27日の定例記者会見で、大型商業施設進出計画が持ち上がっている市北西部の市街化調整区域について「開発を抑制するという従来の考え方を改め、で.きるだけ土地利用が進むよう庁内で検討している」と述べた。
 栗原市長は、東日本大震災以降、津波の心配が少ないJR沼津駅より北側のエリアの土地利用の需要が高まっていると説明。市街化調整区域を開発するには用途変更の手続きが必要なため、「開発の規制がなくなれば、商業施設に限らず、物流や製造業などの進出の可能性も出てくる」と地域振興につながる期待を示した。
 市内では、郊外に大型商業施設進出を期待する声がある一方で、中心市街地の衰退を懸念する声も出ている。これに対し、栗原市長は「中心市街地が疲弊する理由は他にもある。(売上減などの)ダメージを受けるから反対するのではなく、郊外と中心市街地の在り方に矛盾が生じないよう、できることを粛々とやっていきたい」と述べた。
《静新平成25年8月28日(水)朝刊》

市街地活性化基本計画

市街地再制へ「重点区域」
 経産省創設へ 規制緩和、税制優遇も
 経済産業省が成長戦略の一環として検討する地方の市街地活性化策の概要が27日、分かった。支援対象を大幅に絞り込んだ新たな「重点支援区域」制度を2014年度にも創設する。初年度には計約90億円を投じ、税制優遇や規制緩和を呼び水に民間の投資を促す。県庁所在地や観光名所など全国で数十カ所の支援認定を想定している。
 衰退する地方の中心市街地の再生に向けて、14年度予算の概算要求に関連経費を盛り込み、重点区域に限定した税制改正を要望する。中心市街地活性化法の改正案を14年の通常国会に提出することを検討する。自民党が29日に開く小委員会に新制度を示す。
 新制度は中心市街地の中でも、特に地域経済の核となる数㌶ほどの区域を重点的に支援する。市町村や事業者が主体的にまちづくりに取り組むことが要件となる。認定を受けた区域に商業機能の高い施設をつくりやすくするため、特例的に大型店の出店手続きなどの規制を緩和する方向で検討している。
 空き店舗や未利用地を取得した事業者に対する不動産取得税の減免措置を新設する。シヨッピングセンターなどを整備する事業者に国が費用の3分の2を補助する制度も新たにつくる。
 中心市街地活性化法に基づく現在の制度は、市町村の申請に基づく「認定中心市街地」に対し、国が市街地整備の交付金や商店街振興のための補助金を出している。認定市街地の多くは広さが百数十㌶で、市街地全体への幅広い支援が特徴となっている。
*●中心市街地の活性化 中心市街地ににぎわいを取り戻すことを目指す「中心市街地活性化法」に基づき、国が費用を補助して商店街や地域の活性化を促している。市町村が基本計画をつくり、首相が認定する仕組み。これまで認定を受けた地域は東京都と徳島県を除く45道府県の116市119地域。人口減少や厳しい財政状況が続き、対応が課題となっている。
《静新平成25年8月28日(水)朝刊》

2013年8月23日金曜日

中心部建て替え 国交省補助拡充.

中心部建て替え 国交省補助拡充.
 都市の集約を推進
 国土交通省は22日、民間事業者が古いビルなどを病院や住宅、店舗が入った複合施設に建て替える際の取り壊し費用への補助を2014年度か拡充する方針を固めた。中心市街地活性化法で定めた地域が対象で、地方都市の中心部に住宅や商業地などを集約する「コンパクトシティー」の推進が狙い。静岡県では静岡、浜松へ掛川、沼津、藤枝市が対象。
 現行は、地方自治体に補助制度がある場合のみ国、地方で3分の1ずつ補助しているが、自治体に制度がなくても国単独で補助できるようにする。国単独の揚合も上乗せはせず3分の1を補助する方向だが、全額が自己'資金の場合に比べて負担が軽減できる。
 これまで事業者から「地域によって負担に差がある」と不満の声が出ていた。
 また同省は14年度税制改正で、空き地や空家の売却を促し、市街地整備計画を作りやすくするため、中心市街地で不動産を売買した場合の税の軽減を要望する。コンパクトシティーは、生活に必要な施設を集約し、人口減少で空洞化が進む市.街地の活性化を図る。

《静新平成25年8月23日(金)朝刊》

2013年8月22日木曜日

「郊外型大規模商業施設による中心市街地への影響」

郊外への大型店出店を問う
日本総研 藻谷浩介氏を講師に
市街地再生とは両立せず
データ挙げて厳しい評価
中心市街地活性化協議会(会長"市川厚・沼津商工会議所会頭)は、まちづくり講演会「郊外型大規模商業施設による中心市街地への影響」を十九日、商工会議所三階ホールで開き、日本総合研究所調査部の藻谷浩介氏の話を聴いた。市立病院東側に進出の話が出ている大規模商業施設を念頭に置いた講演会で、市議らも聴講した。

はじめに市川会頭は「私達は三年半前から(同協議会として)中心市街地の活性化に取り組んでいる。藻谷先生の話を聴いて、間違いのない判断をしたい」とあいさつした。
講演に移ると藻谷氏は、今回の出店話について「五年前なら、さほど驚かなかったと思うが、平成二十五年に、こういう話が出てきたというのは驚きだ。『あえて、ここ沼津にショッピングセンターを』という話を聞いて『本当ですか』と、ショッピングセンターのプロなら全員がそう言うだろう。三島ならまだ分かるが。今回の話を聞いて最初に思ったのが、『サントムーンの方が近いだろう』ということ。清水町は意地で(沼津と)合併したくないだけで完全に沼津(と一体的)だ。(今回の話が)沼津のまちにとっていいのか悪いのか、ニュートラルな観点で考えた。アメリカへの行きと帰りの飛行機の中で考え続けた。これは全国で購演している私としては画期的なことで、一般市民にとってプラスになるか、ならないかの観点で考えた」として話を進めた。
「市民の働く場所が増えるか、ということだが、同じパイを争うだけで働く人が増えるか減るかは前から分かっている。日本に千以上のショッピングセンターが出来た経緯で、その時(々)に結果が出ている。サントムーンでも結果が出ている。沼津市民である以上、沼津で買い物をしたいという人もいるだろう。しかし、清水町と沼津が合併した途端、サントムーン万歳となるのか。そんなことは、あまり関係ない」
「(新しい店が出来)品揃えが増えるという意見もあると思うが、正直あまり関係ない。(進出が言われる)今度の大型店が初めて置くような品物だったら、サントムーンやイオンが置いたはずだ。推進する側の人は必ず言う。『雇用が増える』『市内で買える商品の種類が増える』『富士市や清水町まで行かなくても済む』『駐車場に止めてゆっくり買い物できる』と。この四つは必ず言う。市の商業にとってプラスになるのかならないのか。市内どこでもいいから、商売やっている人から見てプラスなのかマイナスなのか。市全体の店の売り上げにとってプラスなのかマイナスなのか」
「市全体の売り上げは過当競争になって減る。これはすごく大事なポイントだ。日本では消費税が直接、市に入らないから、あまり(商業床の増床が、どういう結果を生むか)真剣に考えてはいないが、これも実は数字がある。全国での数字があり、増えるか増えないかは分かっている。もし市議会議員が私の言うことと反対のことを言うのであれば、それは全く勉強していないということだ」
藻谷氏は、一九九〇年度末(平成二年度末。以下「バブル期」と表記)から二〇〇六年度末までの沼津市内の小売業の売り場面積、小売り全体の売上額、小売業の雇用者数、床効率(坪売上)の推移をグラフで示した。
平成十八年度以降は、小泉純一郎内閣の時に調査が廃止されたことでデータがないというが、〇六年度末というのは第一次安倍晋三内閣の時で、この時の日経平均株価は一万七千円から一万八千円。
藻谷氏は、最近の株価上昇報道を示唆。十八年度末に比べて今の方が景気が良いようなイメージを持ちやすいが、「数字を見ないでムードで判断するのはよすべき」だときっぱり。「沼津市内の店の売り場面積はバブル期から二五%程増えたが、売り上げは二割減少した。床効率(坪当たりの売上額)は三六%も減少していて、その後、店がバタバタ潰れたのも当然だ。売り場を増やした以上、人を置かない訳にはいかない。雇用は一時増えたが、売り上げが下がるので、その後は、どんどん減った」との分析結果を示した。
さらに、「商売は社会福祉事業ではなく、人を減らして成り立っている。売り場面積をいくら増やしても、従業員は、そんなにいない。これが分かっていない人は大型店の進出に賛成しないでほしい。そういうことが分からない人が、他の市町では議員に多い」とした。
また、同じ期間の清水町のデータも示し、「バブルの頃は、もともと店があまりなかった。バブル期に比べて(平成十八年度末は)売り場面積は二倍に増えた。すると売り上げは二倍に増えたのだろうか。バブル期に四九四億円だった売り上げは五五〇億円。売り場は二倍に増えたのに売り上げは一・一倍。(沼津より)小さい清水町で売り場を二倍に増やしたのに売り上げがほとんど増えていない。床効率は四四%も減少した。大きなホテルを造っても、ホテルが出来たから泊まるという人はあまりいない。それと同じように営業効率が悪くなって(店は)どんどん潰れる。雇用は一時、順調に増えたが、売り上げが増えなくなったので働く人も増やせない。(清水町は)サントムーンで景気がいいというのは見かけだけで、数字はついてきていない。イメージだけで議論するのは駄目だ。なぜ現実を見ようとしないのか」。
続けて、沼津市と清水町を合わせた同期間の数字にも触れた。
それによると、バブル期に比べて平成十八年度末の売り場面積は三五%増えたが、売り上げは一五%、床効率は三七%、いずれも減少。これについて藻谷氏は「取り合うのではなく潰し合っている。(商業床の増床を)やればやるほど、お宅ら(沼津市と清水町)の税収が下がる。これは数字を見ないから」だと厳しく指摘。
「(商業床の)面積を増やせば増やすほど過当競争になって売り上げが落ちる。売り上げが落ちるので雇用も増やせない。この商圏の中で取り合っているのは全く意味がない。株価が(今より)ずっと高かった時もこうだ。当時より今は人口が減っていて、お年寄りが増えている。静岡市(現静岡市域)では、バブル期に比べて(十八年度末は)売り場が二六%も増えたが、売り上げは一〇%減少した。非常に厳しい状況だ。商業床の面積と売り上げの差がどんどん開いた。この時(平成十八年度頃)の静岡でも、店が増える以上、そこで働く人が増えるのではないかという意見があった。数字を見ないから、こういう意見が出る。この数字は経済産業省のホームページに出ている。経産省の統計ぐらいは見てほしい」
この後、横浜市、東京二十三区の例でも、売り場面積が増えることによって売り上げは実質的に減っていることなどを示し、「横浜でできなかったことを沼津ができるというなら、それは傲慢だ。イメージだけで語っている。(商業床の増床によって)途中までは増えている雇用も過当競争になったら減らすしかない。東京と沼津は売り場の増え方、売り上げの減少、床効率の減少、雇用の減り方、皆、ほとんど同じ。大型店の出店は東京の失敗を繰り返すことになる。なぜそう言えるか。過去、全国どこもそうなっている。日本中同じ数字だ。どこでもできていないことを(沼津なら)できると断言できるのか」
「売り上げが増えなければ商業が栄えたということにはならない。日本中で店の売り上げが減るのは誰のせいでもない。団塊世代が退職して、消費が減っているので物が売れない。だから日本中で大型店への投資は終わっている。ここ(市立病院東側への出店)は誰かを潰して(その分の需要を)取れると思ったのだろう。彼ら(大型店の人間)も、こういうことは知っている。それを、諸手を挙げて歓迎しているのが沼津市民と市長だ」
「霞ヶ関では、沼津は沼みたいに恐ろしいところだと思っているのではないか。(郊外への大型店の出店は)鉄道高架計画とも矛盾している。郊外と市街地の両方やるというのでは、中心市街地活性化計画というのは郊外型をやらないということを前提にしているから、国から見ると、『なんだ、こいつらは』ということになるのではないか」
「皆さんは(郊外型大型店の出店と中心市街地活性化が)両立すると思っているようだが、(店は)一つ増えれば一つ潰れる。プラスになるのは駐車場付きの店が一軒増えるということだけ。(大型店進出を歓迎するのは)『いいことあるぞ』とロシアンルーレット(の引き金)を引くのと同じ」などと断じ、これまで何回も沼津で講演し、市行政、産業界の取り組みに翻意を促してきたのと同様、警鐘を鳴らした。
《沼朝平成25年8月22日(木)号》



大規模店の影響探る
沼津中心市街地活性化協 識者招き講演会
 沼津市中心市街地活性化協議会(会長・市川厚沼津商工会議所会頭)はこのほど、「郊外型大規模商業施設による中心市街地への影響」をテーマにしたまちづくり講演会を沼津市で開いた。
 市北西部に大規模商業施設の建設計画が持ち上がっている状況を踏まえ、建設された場合の影響についての意見を有識者から聞くために企画した。商業者ら約70人が出席。講師を務めた日本総研主席研究員の藻谷浩介さんは、大規模商業施設建設後の売り上げや雇用状況を県東部地区や横浜市などの事例を交えて考察した。
 藻谷さんは「売り場面積が増える一方、過当競争に伴い売り上げや雇用が減少する現象が起きている」と懸念を示した上で、「沼津港のブランドイメージは高い。観光客がゆっくりと時間を過ごせるよう駅から港までの動線をどうするかがポイント」と提案した。
《静新平成25年8月22日(木)朝刊》

2013年8月10日土曜日

街づくり講演会案内

演題:「郊外型大規模商業施設による中心市街地への影響」について
講師:藻谷浩介氏


2013年8月1日木曜日

「市街地のゴーストタウン化」

「市街地のゴーストタウン化」
 上 渡辺利明
本紙七月二十四日付報道によると、東椎路の市立病院近くに大型商業施設の開設が検討されているという。高齢化した農業者等は地代収入につながるものとして期待するかも知れないが、このような施設の誘致は時代錯誤であることを指摘したい。
この計画には市も前向きに対応しようとしているようだが、これが進めば地盤沈下の進む沼津駅周辺商業活動を決定的に破滅に導くものとなろう。
では、今回の計画を、どのように考えるべきだろうか。以下、思いつく諸点を指摘していきたい。
小規模なスーパーなどであれば、大した影響はないだろうが、大規模な商業施設であれば、沈滞化の進んだ現在の沼津駅周辺商店の死命を制するものとなろう。
かつて、この地域の繁栄を知る人々から、その再生を望む声は何回も上がっているが、市長、市当局は全く動こうとしない。西武百貨店撤退前後の対応を見ても、この地域の再生については、全く関心がないとしか思えない。
今の沼津に欠けている最大のものは、街づくりの明確なビジョンだろう。現在、斜陽化の進む地方都市の再生を目指す動きが各地で進んでいるが、これらに共通するのは、旧市街地を中核としたコンパクトな街づくりを目指すという発想だろう。
これまで、これらの試みが成功しつつある事例も幾つか紹介されている。
その一つとして、富山市の場合は、郊外に拡散した住民の、市街地およびその近隣地域への回帰作戦を展開している。
拡散した郊外地域へのインフラ投資(道路、上下水道、学校等公共施設が巨額に上り、また高齢化の進む住民のためのバス網の維持なども大きな負担となって、この施策がとられたという。
しかも、中心街近くに建設されたマンション等に移り住む住民には市から補助金が出ている。人口が沼津市の二倍程の富山市では、明確な街づくりのビジョンに基づき、独自の施策が行われている。
かつて、新仲見世商店街の一画でマグロ丼店を経営し、沼津駅周辺総合整備事業の一環として建設されたイーラdeについては明らかな失敗だと指摘してきた栗原裕康市長には、商店街再生の何らかの施策があるものと期待してきたが、現在まで見るべきものはない。
あまつさえ、今回は沼津駅周辺商店街に最後の引導を与えようとしているとしか思えない。鉄道高架事業に手足を縛られ、せっかくのプラサヴェルデも、南北交通問題解決に何の方策もなく、この施設への投資効果も半減である。
プラサヴェルデへの来訪者の多くに駅南側へ回ってもらえば、沼津にとっては大きな交流の場になるのだ。このようなチャンスを生かせない沼津市政が嘆かわしい。
このことは一市長だけの責任ではなく、市議会も連帯して、その責めを負うべきだと思う。(下石田)
《沼朝平成25年7月31日(水)投稿記事》

「市街地のゴーストタウン化」
下 渡辺利明

 別の視点から考えてみると、商業者自身の問題意識の希薄さがあるのではなかろうか。
 日本総合研究所の藻谷浩介氏の講演を度々聞きながら、現在まで何ら行動に移そうとしていない。商店街組織が幾つかに分かれていることにも問題があるのかも知れないが、自分達の今後の存立を左右する問題については連携して取り組むべきだ。自分達の問題について、今の市政に任せておいて良いのか。
 次に、流通業の今後と、街づくりの方向性について考えてみたい。
 藻谷氏が指摘しているように、日本国内の商業施設は既にオーバーストア状況にある。若年人口の減少もあって、各市町の商業販売額は急激に減少しており、その中にあって沼津の落ち込みは際立っている。
 戦後、日本の流通業は米国をお手本に発展し、国民の生活向上に一定の貢献をしてきたが、在来の日本文化を破壊し続けてきた一面も見逃せない。結果として日本の地方都市商店街を疲弊させ、地方経済を沈滞化させる大きな要因となっている。
 昭和六十年代から十五年程、流通業界に身を置き、何回か米国の業界視察を繰り返してきたが、凄まじい競争の世界だった。ハイウェイの走る郊外に次々ショッピングセンターが出現し、また消えていく。ゴーストタウン化したショッピングセンターも多い。
 日本と異なり地価の安い国だから、これらの存在は、やがて忘れられていく。まさに使い捨ての商業施設である。日本でも競合に敗れゴーストタウン化した商業施設、商店街は数限りなく見られる。
 それでは、今後の街づくりはどのような視点で取り組むべきか。かつて中心街への百貨店など大型店を誘致し、これを核とした街づくりを進め一定の繁栄を得てきたが、郊外型大型商業施設が主流となる中で市街地の衰退が進んだ。
 現在は大型商業施設を中心街に誘致するという発想から脱却し、別の視点が必要だ。私は各種公共機関、文化施設等を中心街に配し、これらを核とした街づくりを進めるべきだと思う。市民生活に欠かせない、これらの施設が街の中心部に配置されれば、市民の足は、自ずとこの地域に集まる。人々を集める仕掛けづくりである。
 このような仕掛けが成功すれば、その周辺には小規模な商店、サービス業が集まってくる。ヨーロッパの伝統ある街並みは、このようなコンセプトにより成り立っている。鉄道高架事業遂行だけを目的化することなく、どのような街づくりを目指すのか、明確なビジョンの策定が必要である。
 また、現在の、何もやろうとしない市政への全てお任せではなく、商店街関係者、商工会議所等は積極的に市民の意見を求め、市民と協同して街づくりを進める視点が必要ではないか。(おわり)(下石田)
《沼朝平成25年8月1日(木)投稿記事》