2013年8月1日木曜日

「市街地のゴーストタウン化」

「市街地のゴーストタウン化」
 上 渡辺利明
本紙七月二十四日付報道によると、東椎路の市立病院近くに大型商業施設の開設が検討されているという。高齢化した農業者等は地代収入につながるものとして期待するかも知れないが、このような施設の誘致は時代錯誤であることを指摘したい。
この計画には市も前向きに対応しようとしているようだが、これが進めば地盤沈下の進む沼津駅周辺商業活動を決定的に破滅に導くものとなろう。
では、今回の計画を、どのように考えるべきだろうか。以下、思いつく諸点を指摘していきたい。
小規模なスーパーなどであれば、大した影響はないだろうが、大規模な商業施設であれば、沈滞化の進んだ現在の沼津駅周辺商店の死命を制するものとなろう。
かつて、この地域の繁栄を知る人々から、その再生を望む声は何回も上がっているが、市長、市当局は全く動こうとしない。西武百貨店撤退前後の対応を見ても、この地域の再生については、全く関心がないとしか思えない。
今の沼津に欠けている最大のものは、街づくりの明確なビジョンだろう。現在、斜陽化の進む地方都市の再生を目指す動きが各地で進んでいるが、これらに共通するのは、旧市街地を中核としたコンパクトな街づくりを目指すという発想だろう。
これまで、これらの試みが成功しつつある事例も幾つか紹介されている。
その一つとして、富山市の場合は、郊外に拡散した住民の、市街地およびその近隣地域への回帰作戦を展開している。
拡散した郊外地域へのインフラ投資(道路、上下水道、学校等公共施設が巨額に上り、また高齢化の進む住民のためのバス網の維持なども大きな負担となって、この施策がとられたという。
しかも、中心街近くに建設されたマンション等に移り住む住民には市から補助金が出ている。人口が沼津市の二倍程の富山市では、明確な街づくりのビジョンに基づき、独自の施策が行われている。
かつて、新仲見世商店街の一画でマグロ丼店を経営し、沼津駅周辺総合整備事業の一環として建設されたイーラdeについては明らかな失敗だと指摘してきた栗原裕康市長には、商店街再生の何らかの施策があるものと期待してきたが、現在まで見るべきものはない。
あまつさえ、今回は沼津駅周辺商店街に最後の引導を与えようとしているとしか思えない。鉄道高架事業に手足を縛られ、せっかくのプラサヴェルデも、南北交通問題解決に何の方策もなく、この施設への投資効果も半減である。
プラサヴェルデへの来訪者の多くに駅南側へ回ってもらえば、沼津にとっては大きな交流の場になるのだ。このようなチャンスを生かせない沼津市政が嘆かわしい。
このことは一市長だけの責任ではなく、市議会も連帯して、その責めを負うべきだと思う。(下石田)
《沼朝平成25年7月31日(水)投稿記事》

「市街地のゴーストタウン化」
下 渡辺利明

 別の視点から考えてみると、商業者自身の問題意識の希薄さがあるのではなかろうか。
 日本総合研究所の藻谷浩介氏の講演を度々聞きながら、現在まで何ら行動に移そうとしていない。商店街組織が幾つかに分かれていることにも問題があるのかも知れないが、自分達の今後の存立を左右する問題については連携して取り組むべきだ。自分達の問題について、今の市政に任せておいて良いのか。
 次に、流通業の今後と、街づくりの方向性について考えてみたい。
 藻谷氏が指摘しているように、日本国内の商業施設は既にオーバーストア状況にある。若年人口の減少もあって、各市町の商業販売額は急激に減少しており、その中にあって沼津の落ち込みは際立っている。
 戦後、日本の流通業は米国をお手本に発展し、国民の生活向上に一定の貢献をしてきたが、在来の日本文化を破壊し続けてきた一面も見逃せない。結果として日本の地方都市商店街を疲弊させ、地方経済を沈滞化させる大きな要因となっている。
 昭和六十年代から十五年程、流通業界に身を置き、何回か米国の業界視察を繰り返してきたが、凄まじい競争の世界だった。ハイウェイの走る郊外に次々ショッピングセンターが出現し、また消えていく。ゴーストタウン化したショッピングセンターも多い。
 日本と異なり地価の安い国だから、これらの存在は、やがて忘れられていく。まさに使い捨ての商業施設である。日本でも競合に敗れゴーストタウン化した商業施設、商店街は数限りなく見られる。
 それでは、今後の街づくりはどのような視点で取り組むべきか。かつて中心街への百貨店など大型店を誘致し、これを核とした街づくりを進め一定の繁栄を得てきたが、郊外型大型商業施設が主流となる中で市街地の衰退が進んだ。
 現在は大型商業施設を中心街に誘致するという発想から脱却し、別の視点が必要だ。私は各種公共機関、文化施設等を中心街に配し、これらを核とした街づくりを進めるべきだと思う。市民生活に欠かせない、これらの施設が街の中心部に配置されれば、市民の足は、自ずとこの地域に集まる。人々を集める仕掛けづくりである。
 このような仕掛けが成功すれば、その周辺には小規模な商店、サービス業が集まってくる。ヨーロッパの伝統ある街並みは、このようなコンセプトにより成り立っている。鉄道高架事業遂行だけを目的化することなく、どのような街づくりを目指すのか、明確なビジョンの策定が必要である。
 また、現在の、何もやろうとしない市政への全てお任せではなく、商店街関係者、商工会議所等は積極的に市民の意見を求め、市民と協同して街づくりを進める視点が必要ではないか。(おわり)(下石田)
《沼朝平成25年8月1日(木)投稿記事》

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