2013年9月19日木曜日

沼津高架PIプロジェクトの第6回合同勉強会

橋上駅案の絵も描いてほしい
 合同勉強会で高架案との公平性求め

 沼津高架PIプロジェクトの第6回合同勉強会が十四日、沼津労政会館で開かれ、沼津駅周辺地区と原地区の勉強会メンバー三十七人が出席。七つの代替案のメリットと可能性、デメリットとリスクなどについて、事務局が整理した比較評価案に沿って話し合った。また、計画検討チームが行う技術的検討などに対して監査、指導、助言などを行う技術検討アドバイザーとして大学教授ら三人が石田東生委員長(筑波大教授)から発表された。同勉強会では、石田委員長のほか寺部慎太郎委員(東京理科大准教授)が議論の行方を見守った。

 「ららぽーと」か「ラザウォーク」か 絞られた郊外大型店
 コンパクトシティとの整合性問う声も

 「貨物駅を近傍駅に移転する場合、現貨物駅用地は新たに購入することになるのか。その場合、事業主体はどこで、その経費は誰が負担するのか」など六つの質問に県事務局が答えた後、四グループに分かれた話し合いに移り、二時間程の意見交換の後、各グループのファシリテーター(進行役)が議論の内容を要約し発表した。
 意見として、「どの案に決まるにしても、これからも市民の声を聴いて進めてほしい。計画変更に伴うデメリットは大きな問題。鉄道高架による『コンパクトで集積性の高い地域づくりを進め』という文言は具体性に欠ける。オーバーブリッジ、橋上駅のメリットが書かれていない」
 「原地区と沼津駅周辺のまちづくり
は、パッケージで考えるのではなく、別々に考えるべきだ。最大の効果を生むためには時間がかかってもやむを得ない。公共投資がなければ民間投資は期待できない」
 「コンパクトシティとは逆行する郊外への大型商業施設進出計画問題をPI委員会はどう捉えるか。鉄道高架を推進するのか、橋上駅・南北自由通路でいいのかを議論すべきで、まちづくりとは別に考えるべきだ」などが挙げられた。
 ファシリテーターの責任者は「個々の評価の仕方、メリット、デメリットの表現については持ち帰って検討したい。沼津駅周辺地区と原地区をパッケージで考えた方がいいものと、別にした方がいい、との考えもあった、その点も検討したい」とまとめた。
 そのうえで、「(高架事業を)決定する責任と中止した場合の責任はどうなるのか」との勉強会メンバーからの疑問について事務局に尋ねた。
 事務局担当者は、沼津高架PIプロジェクト推進本部である県交通基盤局の幹部職員が推奨案を決め、鉄道高架事業を中止した場合の責任は事業主体の責任者である知事や市長のほか、市民、事務局もある、との考えを示した。
 メンバーからの「財政問題を心配する声が多い。財政の専門家を技術検討アドバイザーに入れるべきだ」の意見に対して石田委員長は、「七つの代替案のまとめ方、評価の仕方は厳密にチェックしなければならない」として、今回発表した三人のほかに財政の専門家を探していることを明らかにした。
 また、技術検討アドバーザーが常に、一堂に会して議論することは難しいため、PI委員会と個別に話し合うこと、これまでの勉強会での議事も提供して検討してもらう考えであることを示した。
 別のメンバーは、鉄道高架案は絵と立体模型があるのに、対案は絵すら提出されていない、と指摘。比較するためには公平性を欠く点を突き、「橋上駅案と貨物駅代替案を絵にしてほしい」と作製を要望した。
 中心市街地の商業者でもあるメンバーは、国の方針に逆行する形で、現在は市街化調整区域の郊外に大型商業施設が進出しようとしている点について栗原裕康市長の責任の重大性を指摘。これに対して事務局担当者は、沼津市議会九月定例会で質問が出ると思われるので議論を見守りたい、と答えた。
 寺部委員は「デメリット、メリットについて建設的な意見があった」、石田委員長は「難しい段階に来ているが、真剣な議論がなされていて、ありがたい」と感想を話した。

 ※ 解脱 今、沼津市は極めて重大な岐路に立とうとしている。軸足を中心市街地活性化に置くのか、郊外開発に置くのか。あるいは両者を進めようというのか。しかし、「虻」も「蜂」も捕るのは難しそうで、現在行われているPIプロジェクトにも大きく関わる問題が立ちはだかっている。
 栗原市長は七日に開かれた市議会全員協議会で、市立病院東側一画に大型商業施設が進出できるよう土地利用を見直したい考えであることを明らかにした。
 これに対して十五市議が発言したが、明確に反対した議員はなく、市議会としては概ね了承という体をなした。予定地の地権者らで組織する「街並を創造する会」役員は、議論を聴いて安堵する一方、拍子抜けした様子。
 この大型店の郊外進出に対して、市議の一人は全協を前に「中心市街地再生を行っていくという大きな政治姿勢を一八〇度転換し、これまでの計画を反故にすることになります」「中心市街地は将来的な展望も開けないことから、資本、商業者、住民の流出が加速され、他市事例同様にゴーストタウン化することが予想されます」と後援会ニュースで指摘。
 「今後、議員の立場から明確な追及をしていきたいと思います」と結んでいたため、全協での発言に注目したが、「反対」の言葉はなく、「追及」する姿勢もなかった。所属する会派が賛成なので、やはり反対は難しかったのか、あるいは傍聴の柚地権者が気になったのか。
 ところで国は二〇〇六年、地方都市における中心市街地の空洞化に危機感を抱き、「改正中心市街地活性化法」「改正都市計画法」を成立させるとともに、「大規模小売店舗立地法」を加え、いわゆる「まちづくり三法」の全面的見直しを実施。中心南街地再生のためのコンパクトシティづくりを目指順した。
 しかし、地方自治体の自主性に委ねる形で進めてきた、こうした施策が思うような実効性を上げることができずにきたことを踏まえ、今年七月十一日には、コンパクトシティ推進を加速させるため、病院や商業施設などの誘致に向けて来年度から、それらを街の中心部に建てる際の固定資産税の軽減など財政支援を拡充することを発表。
 その一方で、沼津市が進めようとしているような郊外への市街地整備事業への支援縮小を検討するという。今回、沼津市が行おうとしているのは、こうした国の方針に逆行するものとなるのは明らかだ。
 確かに、西武百貨店沼津店が撤退し、旧西武新館跡地に計画されるパチンコ店を含む施設が「沼津の顔」となることに一抹の不安を抱く市民もいる。
 また、市議の中には、閉塞感に覆われた現状について支持者から「市議会は何をやっているのか」と責められ、コンパクトシティを唱えてきた市議でさえ、今回の大型商業施設進出話を歓迎しているのが現実だ。「市民の多くが賛成しているし、市当局も推進したいと言っている」「清水町のサントムーン柿田川と、富士市のイオンタウン富士南に客を奪われたままでいいのか」などということを理由として。
 十七日に開かれた街並みを創造する会の役員会により、進出企業は三井不動産系「ららぽーと」とユニー系「ラザウォーク」に絞られたようだ。両者は既に計画案を示しており、契約期間は、いずれも二十年だという。
 仮に、この話が進み、いずれの施股が建設されるにしても、着工から開店までに三年とすると、開店から二十年後は二〇三六年。その時、沼津市の推計人口は十五万人と今の四分の三。商圏人口の減少に伴い、消費者の購買力、総販売額が減ることは一目瞭然だ。
 また、大型商業施設が進出すれば三千人から四千人の雇用が生まれることに期待する向きもあるが、一方で、既存店の撤退、閉鎖などにより全体の雇用はプラスマイナスゼロ、もしくはマイナスとの政府調査結果もある。
 頻繁に沼津を訪れ、中心市街地の再生に助言している日本総研調査部主任研究員の藻谷浩介氏は十年前、同氏にとって沼津で初めての講演会で、沼津駅前に計画された再開発ビルに触れ、各地の失敗例を挙げ、「街中心部は高層建物でなければ、という変な観念にとらわれている人達がいるが、ビル建設は(市街地活性化の)起爆剤にはならない」と助言した。しかし、市当局(当時は斎藤衛市政)が耳を貸すことなく、市議会も大多数が賛成したイーラde建設を進めた結果は、どうなったか。
 藻谷氏は月刊誌『新潮45(新潮社刊)の最新九月号で若手社会学者と対談。市街地の商店街を再生することが、どういう意味を持っているのかについて説き、「静岡県のある市」という表現ながら沼津市の現状を憂えている。
 市当局からは市街地活性化も並行して、の声も聞こえる。当局と市議会の決断が功を奏すかは時が過ぎなければ分からないことなのかもしれないが、目の前の問題として、国の方針とは真っ向逆に進む形となって、沼津駅付近鉄道高架事業と中心市街地のまちづくりへの影響や両者の整合性をどう図るのか。難しい舵取りを迫られそうだ。
 この方向転換に対しては、沼津高架PIプロジェクトの合同勉強会でも懸念する声があった。

《沼朝平成25919()号》

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