2010年3月20日土曜日

街の顔 駅前に思いやりを

 街の顔、駅前に思いやりを
 休日に生後6カ月の息子をベビーカーに乗せ、沼津駅周辺に買い物に出かけた。百貨店などがある駅前の大きな交差点に横断歩道はない。道路を渡るには、ずっと離れた横断歩道まで行くか、ベビーカーを持ち上げて地下通路の階段を上り下りしなければならない。バリアフリーの言葉が生まれるずっと前にできた古い地下通路にエレベーターはない。
 「車いすの人や足腰の弱いお年寄りはどうするのだろう」。ベビーカーを押す立場になって、真剣に考えた。
 優しさがなければ人は離れていく。駅周辺を整備するなら、まず思いやりから考えたい。(東部総局・望月貴広)
(静新平成22年3月20日(土)「清流」)

2010年3月19日金曜日

沼津地価公示



地価公示 沼津市

 商業地は2年連続の下落で、変動率はマイナス1・0%。中心部の物件の動きは少なく、「様子見の状態」(業者)が続いている。郊外は幹線道路沿いで1千平方㍍以上の規模の物件が関心を集めている。
 住宅地の変動率はマイナス1・4%。落ち込みの幅は前年の2倍に広がったが、中心部に比較的近い金岡、大岡南部の商業施設周辺はむしろ引き合いが強くなっている。
 「好条件の物件は造成中でも買い手が付く。半面、狭い道路沿いはほとんど動かない」と不動産業者。周辺部でも新しい造成地は人気が高い。実例では大岡で12万円前後、原で9~11万円台など。
【 公示地価 地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が年1回公表する土地の価格。都市計画区域を中心に選んだ標準地について、不動産鑑定士が周辺の取引事例などから1月1日時点の1平方㍍当たりの価格を算定する。一般の土地取引や固定資産税などの目安となり、公共事業の用地買収の価格決定にも活用される。地価の指標は、7月1日時点の地価を毎年9月に公表する都道府県地価(基準地価)や3カ月ごとの地価動向報告などがある。】
(静新平成22年3月19日(金)朝刊)



長泉、県内唯一の上昇:地価公示
立地と施策が充実 子育て世代、関心高く
 18日に公表された国の地価公示で、長泉町が抜群の存在感を示した。2008年秋に始まった金融不況で地価は下落が続き、住宅地の調査地点のうち今回上昇したのは全国約1万8千のうちわずか6地点。このうち2カ所が同町内だった。東京から約100㌔。首都圏への新幹線通勤圏という立地条件に加え、ハード、ソフト両面の施策の充実が定住希望者を引きつけているようだ。
 上昇したのは同町下土狩の2地点。変動率はともにプラス0・8%で、残る町内の4地点は横ばいだった。市町別の平均変動率の上位をみると、清水町、裾野市、三島市、伊東市と県東部が続くが、上昇は長泉町だけだ。
 「道路整備や子育て支援といった生活関連施策が充実しているのが大きい」と宅地分譲を手掛けるハウスメーカーは長泉町の優位性を分析する。1990年代後半に整備が始まった都市計画道路が供用時期を迎え、三島などへのアクセスが格段に向上した。近い将来はJR三島駅と新東名を結ぶ都市計画道も通じる。
 高い財政力を背景に02年に導入した子ども医療費の無料化施策も支持を集める。09年度は対象を中学3年生以下まで拡大した。合計特殊出生率は県内トップで、人口増加は続く。沼津市内の不動産業者は「近隣市町から長泉へ子育て世代の転入希望が目立つ」と解説する。
 同町の池田修総務部長は「がんセンターの存在を含め、あらゆる要因が相乗効果を生んでいる。転入希望が多いことの一因に施策への評価があるのなら、行政としてもろれしい」と話した。
(静新平成22年3月19日(金)朝刊)

2010年2月15日月曜日

キツネ化粧で嫁入り行列


 キツネ化粧で嫁入り行列
 沼津・上土朝日稲荷神社
 100人、半世紀ぶり奇習

 沼津市内の狩野川のほとりに立つ上土朝日稲荷神社(通称・お稲荷さん)にちなんだ奇習「キツネの嫁入り」が14日、半世紀ぶりに沼津市中心部で行われた。新郎新婦役のカップルを先頭に、キツネ化粧をした約100人の一行がにぎやかな行列を繰り広げた。
 新郎新婦役を務めたのは、近く結婚を予定している藤枝市の岡村友樹さん(27)と静岡市葵区の山田朋子さん(28)。岡村さんが待つ同神社に、山田さんが渡し舟で到着すると、集まった人から「おめでとう」と拍手が送られた。2人は手を取り合って神社に向かい、三三九度を交わすなどの神前結婚式を行った。
 その後、人力車に乗り込み神社を出発。かみし一もや法被姿の地域住民らが後に続いた。
 沿道からの声に手を振って応えた岡村さんは「活気があり、温かな沼津の雰囲気を感じることができた」と満足げ。山田さんも「商店街の人の心遣いがうれしかった。お互いの気持ちを確認する機会にもなりました」と笑顔を見せた。
 計画した沼津あげつち商店街振興組合の内田祥一理事長は「笑顔いっぱいの最高の嫁入りになった。工夫を重ねて、沼津に定着するイベントにしたい」と力を込めた。
(静新平成22年2月15日(月)朝刊)

2010年2月14日日曜日

キツネの嫁入り半世紀ぶり復活



 キツネの嫁入り半世紀ぶり復活
 きょう、130人大行列
 (沼津の商店誘客行事)
 バレンタインデーの14日、沼津市中心部に"キツネ"の一行が現れる。行列の先頭には新郎新婦ー。かつて市内の商店主らが誘客のために行っていた「キツネの嫁入り」行列イベントが、半世紀ぶりに復活する。
 計画しているのは「あげつち商店街振興組合」(内田祥一理事長)。市中心部にある同商店街の一角、狩野川沿いの「お稲荷さん」こと、上土朝日稲荷神社にちなむ。
 「ヤシロメガネ」3代目の八代厚さん(84)によると、同商店街では1955年前後、「キツネの嫁入り」行列を中元時期などに行っていた。
 男性店主らがキツネの面を着け(かみしも姿でスクーターに乗り、御殿場や富士、遠くは松崎まで集客に繰り出した。白無垢(むく)姿の花嫁も男性が女装したという。

 「先代から話を聞き、復活させたかった」と内田さん。今回、全国商店街振興組合連合会の補助金事業に選ばれ、念願がかなった。結婚を予定する静岡市内のカップルも見つけ、文字通りの「嫁入り」行列が実現する。
 以前は仮面だったが、今回は参列者全員の顔にキツネの化粧をする。同商店街の店主や「おかみさん会」のほか、地元の子供会、一般参加者ら130人規模の大行列になる見込みという。
 14日当日は、花嫁を乗せた渡し舟が正午ごろ、新郎が待つ狩野川に架かる「あゆみ橋」に着く。新郎新婦が上土朝日稲荷神社で挙式した後、午後1時に行列が始まる。
 市中心部の大手町、仲見世、上本通り、アーケードの各商店街を通り、午後2時半ごろ、あげつち商店街に戻る予定。
 あげつち商店街に並ぶ沼津東急ホテルも美容室を提供するなど、一丸で盛り上げる。内田さんは「ゆくゆくは沼津の夏祭り、よさこいに並ぶ行事にしたい」と期待する。
(静新平成22年2月14日(日)朝刊)

2010年2月11日木曜日

JR貨物社長 富士への統合否定的


 JR貨物社長 富士への統合否定的


 JR沼津駅周辺の鉄道高架事業をめぐり、JR貨物の小林正明社長は10日、都内の本社で行った定例会見で、川勝平太知事が展開している沼津貨物駅の不要論に対し、「(鉄道高架)事業は県事業。知事が変わり、考え方が変わったのかもしれないが、それは厳然として残っている」と反論し、「明治22年の立地以来、120年にわたり地元に貢献してきた。今後も使命を大いに果たさなければならない」と代替駅の必要性を強調した。
 富士地区の貨物駅に移転統合する可能性については「可能であればこの問題がなくても統廃合している」と否定的な見解を示した。同席した惟村正弘執行役員営業部長は「吉原は(製紙工場向けの)特殊な駅。富士は県が用地を拡張してくれれば別だが、沼津駅で取り扱い可能な長い貨物が扱えない」と指摘した。
 また、小林社長は川勝知事に面会を申し込んだことを明らかにした上、知事に対し、こうしたことを「真摯(しんし)に説明し、理解してもらわなければならない」と述べた。ただ、地元への説明については「地域のお役に立っていると確信している。不要論に説明義務が生じるという(知事の)指摘は納得しがたい」とした。
 惟村部長は沼津貨物駅で扱っている貨物について、「確かに取扱量は少ない」と認めた上、「トラックや船で運ぶことが難しい化学薬品や長尺物のほか、青果物など生活に密着した貨物も安価に運んでいる。沼津貨物駅の機能をセールスポイントに企業誘致も進んでいる」と説明した。
(静新平成22年2月11日(木)朝刊)

鉄道高架事業は、これからどうなるのか(下)長谷川徳之輔

 沼津駅周辺総合整備事業、鉄道高架事業は、これからどうなるのか(下)長谷川徳之輔

 これからどんな問題が出るか、どうして解決するか
 さて、このような事情にある沼津駅周辺総合整備事業はどう進むかである。
 第一に、六つの事業のうち、推進派の希望通り、原地区の貨物駅は中止されるだけで、残りの事業は、そのまま進むのであろうか。
 第二に、鉄道高架事業は中止されて、南北横断道路、屋上駅、屋上広場などの新規の事業に都市計画が円滑に変更されるだろうか。
 第三に、すでに沼津市が買収している鉄道高架事業予定地は、どう処理されるのか。
 第四に約三百億円の鉄道高架事業のための基金をどう経理処理するのか。
 第五に、貨物駅として都市計画事業の認可を受けている土地には、建築物の建築規制、土地利用の規制、土地の買い取り請求などの制限が付いており、いつまでも制限を続けるのか、また土地の買い取り請求に、どう対応するかである。
 第六に、ここまで事業を進めてしまった行政、議会の責任をどう間うのか、などなど。いろいろな問題を解決しなければならない。
 一番大切なことは、沼津駅周辺総合整備事業を考えた時点と今の時点では大きく経済社会環境が変わってしまったこと、これまでの考え方や仕組みが通用しなくなっていることを、市民も行政もしっかり認識しておくことであり、過去の失敗、不業績を今になってあげっらっても何にもならないことを認識すべきである。過去は過去として処理し、これからどうすべきなのかを考えなければならない。
 明確な決着が必要
 第一の問題は、それでは、都市計画は変更されず、なし崩し的に先延ばしされることである。
 事業は止まっても、計画をそのままにして、いつか復活するとして処理を先延ばしすることであり、行政の責任の先延ばしに過ぎず、従来は、このような対応がされることが通例であった。
 しかし、貨物駅の計画を止めては、残りの事業が進まないことは前述のとおりであり、先延ばしすることは問題の解決にはならない。表向き事業がストップして、鉄道高架事業は棚ざらしになるだけである。貨物駅の移転が消えるからには、全体の計画の見直しをしなければならない。
 第二に新しい計画を決めること、南北自由通路や屋上駅などに円滑に変更することができるかである。
 計画案、財源、費用負担などJRとの交渉、国、県、沼津市との調整を考えると、すぐに転換することは難しく、相当長期の時間を余儀なくされよう。まずは、小田原駅、清水駅などの事例を徹底的に調査して、情報資料を集めて、その功罪を市民に公開する。計画作成には、市民、商店街、専門家の参加を求めて、市民運動を高めることだろう。世論の力で市民意識を高めることしかなかろう。
 第三は、買収した用地を無駄にしないことである。
 富士見町地区、原地区には沼津市が買収した用地が散在している。土地の買収には利権が付きまとい、沼津市は、その実態を公表したがらない。しかし、どう利用するか考え、円滑に資産処理を進めるには、実態を隠すことなく、どのくらいの量があるのか、現在価値はどのくらいかなど、しっかりした情報資料を整備して、新しい利用方法を考えなくてはならない。
 原地区の貨物用地はまとまった土地であり、教育施設、医療施設や市民公園などに利用できよう。富士見町の土地は、鉄道高架事業用地を生み出すのではなく、良好な居住環境を整備するための区画整理事業を進めていくことであり、有効利用の道を探ることである。災い転じて福となし得るかどうかである。
 都市計画の事業制限、土地の買い取り請求 第四は、速やかに都市計画事業の認可を取り消すことである。
 都市計画法、土地収用法は、事業を推進するために、土地所有権の強制収用、土地利用の制限などを義務付け、逆に制限を受ける土地所有者の立場から、土地を時価で施行者が買い取ることを請求する権利が認められている。
 都市計画事業の認可の効果が続く限り、土地所有者の権利は不安定であり、また、事業を中止するにもかかわらず、施行者、沼津市は買収予算を計上し、要らない土地を買い続けなければならない。貨物駅の移転を中止するのであれば、早急に貨物駅移転の都市計画の事業認可を変更しなければならない。先延ばしして、放置しておく訳にはいかないのだ。
 使ってしまった基金の問題
 第五は、市民が営々として積み立てたはずの三百億円の鉄道高架事業を進める資金、基金がどうなっているか、しっかり経理できるかである。
 これまで鉄道高架事業の沼津市の負担は、三百億円の基金が積み立てられているから大丈夫だと説明されてきた。確かに現金であればそういう話も成り立つが、今果たして、この資金がどのくらいあるのか。
 積み立てた資金は現金であるわけでなく、土地の買収、他の事業への流用などで大半は使われてしまっている。基金の財務状況は必ずしも明確に示されている訳ではない。
 そもそも、鉄道高架事業のために積み立てたという基金が、もし鉄道高架事業をやらないとした時に、どう経理処理したらいいのか対応策は明確ではあるまい。貸付金だといわれる流用先の資金が返済される見込みもなかろう。使ってしまったものを取り戻すことはできないし、地価の変動で下がってしまった土地価格を取り戻すこともできはしない。
 真のリーダーの責任、出番だ
 第六は、究極の問題であるが、ここまできてしまったことの政治、行政の責任問題である。
 これまで二十年近く、無意味に、だらだらと進められてきたのは、中止することによって、それまでの事業に誰が責任を取るかが、はっきりすることを避けたい心理も、当事者には正直あったものと思われる。
 国、県、沼津市、それにJRが、それぞれの思惑でかかわってきたが、時代の転換により、これまで適切だと思ってきたことが変質してしまい、計画への疑問を持ちつつも、正直、転換を言いかねて、みんな、だんまりを決め込むか、責任を他に転嫁してきたのではなかろうか。
 折から中央政権も自民党から民主党に政権交代し、新政権はコンクリートから人へのスローガンで無駄な公共事業はやれない、やらないという方向を示している。新政権の中枢に位置する選良がこの沼津市から選出されている。
 今こそ、そのスローガンを実行するために、国土交通省、静岡県、沼津市、さらにJR当局を調整し、円滑に事態が解決されるように、舵取りする責任がある。川勝平太静岡県知事、栗原裕康沼津市長、いずれもこれまでの政策からは自由な立場にあり、県民、市民全体のために冷静、客観的に判断することができる立場にあると思う。まさに、これらのリーダーたちの出番だ。
 究極の責任は沼津市民にある
 究極の責任問題は、ここまで来たら、本来は鉄道高架事業の施行主体でもない沼津市、沼津市民が負わなければならなくなったことである。
 これまでの努力が無駄になったという思いもあるだろうが、さらなる負担を避けるために、方向転換は仕方がないと思うしかないと思わざるを得ない。
 この二十年の政治や行政の責任を問うたところで、市長や市議会は何回も替わっており、議会も市民も当時は鉄道高架事業を認めていたのだから、責任は市民全体にあると思うしかない。そう思うことが事態の解決を進めることになるのではなかろうか。今、問われるのは、沼津市民の冷静な判断、英知である。(おわり)(元大学教授、東京都)
(沼朝平成22年2月11日(木)号)